大規模病院における KPC-2 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)アウトブレイク:死亡率および PCR 法による KPC-2 のスクリーニングの影響の調査★
Large hospital outbreak of KPC-2-producing Klebsiella pneumoniae: investigating mortality and the impact of screening for KPC-2 with polymerase chain reaction
T. Ducomble*, S. Faucheux, U. Helbig, U.X. Kaisers, B. König, A. Knaust, C. Lübbert, I. Möller, A.C. Rodloff, B. Schweickert, T. Eckmanns
*Robert Koch Institute, Germany
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 179-185
背景
多剤耐性 Klebsiella pneumoniae カルバペネマーゼ(KPC)-2 産生肺炎桿菌(K. pneumoniae)は、医療関連感染症の原因として世界的に増加しつつある。
目的
臨床的感染が死亡に及ぼす影響を調査すること、および KPC-2 特異的 PCR 法を使用することがアウトブレイク時の接触隔離実施までの期間に及ぼす効果を調べること。
方法
症例の定義は、2010 年 6 月から 2012 年 7 月に KPC-2 産生 K. pneumoniae の臨床的感染・保菌が認められた患者とした。症例の人口統計学的特性および医学的特性を記述し、感染と死亡との関連を、併存疾患および人口統計学的特性で補正して、頑健性のある標準誤差を用いた Poisson 回帰により評価した。培養に基づく方法と PCR 法を使用する方法による接触隔離実施までの期間を、Wilcoxon の順位和検定により比較した。
結果
検出された症例 72 例のうち、17 例(24%)は移植を実施しており、21 例(29%)は悪性腫瘍患者であった。全体で 35 例(49%)に臨床的感染がみられ、頻度の高い感染症は肺炎および敗血症であった。感染は死亡の独立リスク因子であった(リスク比 1.67、95%信頼区間 0.99 ~ 2.82)。接触隔離実施までの期間の中央値は、PCR 法 1.5 日(範囲 0 ~ 21 日)、培養に基づく方法 5.0 日(範囲 0 ~ 39 日)であった(P = 0.003)。培養に基づく方法を使用した症例の 48%(29 例中 14 例)では、間欠的に陰性所見が認められた。
結論
KPC-2 産生 K. pneumoniae は、主として重症患者に感染がみられた。症例の半数は臨床的感染症を発症しており、死亡リスクが高かった。PCR 法により隔離が迅速化し、保菌患者の予防策を実施する機会が得られることから、アウトブレイク時には早期に PCR 法を使用すべきである。KPC 検出パターンに関する知識を強化し、スクリーニング指針を修正するためには、さらなる研究が必要である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
カルバペネマーゼ産生肺炎桿菌は、広域抗菌薬であるカルバペネム系薬剤を分解する酵素を産生する耐性菌である。まだ日本ではまれであるが海外では増加しており、集中治療の必要な重症患者では、もともと病原性の強い菌であるうえに抗菌薬耐性となるため、1 度発症すると極めて重篤となる。本論文では、保菌症例の約半数が発症し、その 6 割が死亡するというデータである。耐性菌伝播は手指や環境を介して広がるため、早期発見と早期の隔離予防策が重要となる。遺伝子増幅検査(PCR)による早期スクリーニングは、感染拡大を防止するという点で、積極的サーベイランスの有効性を主張している。しかしながら、アウトブレイク時には対象が明確であるが、日常的な積極的監視スクリーニングは費用対効果を含め検討が必要である。
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