結核低蔓延国の医療従事者を対象とした系統的な結核スクリーニングのためのインターフェロン γ 遊離測定法の費用対効果

2015.02.27

Cost-effectiveness of interferon-gamma release assay for systematic tuberculosis screening of healthcare workers in low-incidence countries


A. Kowada*, J. Takasaki, N. Kobayashi
*General Affairs Department, Ota City, Tokyo, Japan
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 99-108
背景
結核は、その低蔓延国において重要な職業感染症の 1 つである。医療従事者の結核の診断・治療の遅延によって、患者および他の医療従事者を対象とした高コストを要する大規模な結核の接触者スクリーニングを余儀なくされる。
目的
医療従事者を対象としたインターフェロン γ 遊離測定法(IGRA)を用いた結核スクリーニングの費用対効果を、ツベルクリン皮内反応検査(TST)および胸部 X 線検査を用いる戦略と比較評価すること。
方法
医療費支払者としての病院の立場(hospital payer perspective)を用いた Markov モデルを作成した。対象集団は、雇用時 30 歳の医療従事者の仮説コホート、および高リスク病棟に 60 歳まで勤務した医療従事者の仮説コホートとした。以下の 6 種類の戦略をモデル化した。TST、QuantiFERON-TB Gold In-Tube(QFT)、T-SPOT.TB(T-SPOT)、TST 後の QFT、TST 後の T-SPOT、および胸部 X 線検査。有効性の主要評価項目は質調整生存年(QALY)とした。スクリーニング対象者 1 名あたりの費用および QALY の増分を算出した。
結果
QFT が最も費用対効果に優れた戦略であり、「支払意志額(willingness to pay)」の増分は 50,000 米ドル/QALY(雇用時:334.91 米ドル、21.071 QALY、高リスク病棟:1050.32 米ドル、20.968 QALY、2012 年の値)であった。費用対効果の感度が高かったのは、潜在性結核感染率および BCG ワクチン接種率に対してであった。TST 後の QFT は、潜在性結核感染率が雇用時 0.026 未満の場合、および高リスク病棟 0.08 未満の場合に、QFT 単独よりも費用対効果が高かった。
結論
QFT を用いた系統的な結核スクリーニングは、費用対効果に優れた医療従事者のスクリーニング法であり、低蔓延国に対して推奨される。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
潜在性結核感染症の診断に IGRA が多用されているが、一般的にクォンティフェロン TB ゴールド(QFT)および T-SPOT TB の 2 種類があり、QFT は、3 本の採血管と正確な採血量、採血後の攪拌など採血時の手技の煩雑さがある。一方、T-SPOT TB はヘパリン入り採血管 1 本ですむが、採血後の検査室での処理が煩雑である。しかしながら、最近国内の臨床現場では T-SPOT が採血の容易さから好まれている。乳児期や免疫不全状態など特定の検査対象者の QFT および T-SPOT TB の検査結果の判定については、その解釈に留意する必要がある。国内でも IGRA の普及とともに、医療従事者に対する職業感染予防の対策の一環としての活用・普及が望まれる。

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