小児血液・腫瘍内科における汚染した消毒薬噴霧器内での生残能が高い菌株によるアクロモバクター菌血症のアウトブレイク
Achromobacter bacteraemia outbreak in a paediatric onco-haematology department related to strain with high surviving ability in contaminated disinfectant atomizers
E. Hugon*, H. Marchandin, M. Poirée, T. Fosse, N. Sirvent
*Centre Hospitalier Universitaire de Nice, France
Journal of Hospital Infection (2015) 89, 116-122
背景
アクロモバクター(Achromobacter)属菌は水性環境由来のグラム陰性桿菌であり、免疫低下宿主の菌血症とそのアウトブレイクに関与することがある。
目的
小児血液・腫瘍内科におけるアクロモバクター菌血症アウトブレイクの特性について述べること。
方法
1 年間にわたり、患児 7 例の血液培養 16 件に Achromobacter 属菌陽性が認められた。全患児が免疫低下状態にあり、発熱がみられ、中心静脈カテーテル(CVC)を留置していた。病室の微生物学的調査を実施し、さらに消毒薬噴霧器(塩化ジデシルジメチルアンモニウム 0.25%[DMA]、Surfanios®)の検査を行った。臨床株および環境株の合計 41 株を、enterobacterial repetitive intergenic consensus(ERIC)-PCR 法、repetitive PCR 法、random-amplified polymorphic DNA(RAPD)-PCR 法、およびパルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)法を用いて解析した。Achromobacter 属菌の代表的な2株および参照株として緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)1 株に対する DMA の殺菌活性を評価し、バイオフィルム形成と浮遊培養の 2 つのモデルを比較した。
結果
重度の 2 例を含む 7 例は、全身抗菌薬療法および/またはカテーテル抜去により治癒した。環境分離株 25 株が、病院のろ過した水道水、消毒薬噴霧器、および病室という経時的順序で回収された。環境株、患者株、および噴霧器由来株はいずれも、同一の PCR パターンおよび PFGE パターンを示した。消毒薬の感受性試験から、噴霧器由来分離株はバイオフィルム状態で高い生残能を有しており、DMA との接触時間が短い場合は抵抗性を示すことが明らかになった。
結論
噴霧器のチューブ内に Achromobacter が生残している消毒薬噴霧器の使用が、CVC の Achromobacter 汚染・定着に関与していると考えられる。制御対策(噴霧器容器の使用中止、滅菌水の使用)により、汚染源除去およびアウトブレイク制御が可能となった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
本論文では、グラム陰性桿菌のアウトブレイク調査により、水道水、病室表面、家具、消毒薬の噴霧器の汚染が確認された。グラム陰性桿菌の環境汚染を想定した対策は日ごろから行われるべきであるが、同時に、消毒薬の希釈に使用する水の水質、希釈後の使用期間、使用方法、容器など、消毒薬の取り扱いを確実に行うことが重要であることが再認識された。が、そもそものところで、消毒薬を噴霧する必要性については疑問が残った。
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