新生児室の乳児におけるプロバイオティクス微生物の交差保菌★
Cross-colonization of infants with probiotic organisms in a neonatal unit
L. Hickey*, S.M. Garland, S.E. Jacobs, C.P.F. O’Donnell, S.N. Tabrizi on behalf of the ProPrems Study Group
*Royal Children’s Hospital, Australia
Journal of Hospital Infection (2014) 88, 226-229
本研究の目的は、臨床試験で早産児に対してプロバイオティクス※を投与した新生児室における乳児間のプロバイオティクス交差保菌について調査することである。臨床試験中および臨床試験終了後の 2 つの時点で、新生児室の乳児から得た便サンプルの検査を行った。臨床試験中に乳児 43 例のサンプルの検査を行い、プロバイオティクス投与を受けた全 5 例および投与を受けていない 38 例中 3 例が保菌していた。臨床試験後の検査では 44 例中 1 例のみが保菌していた。本研究の交差保菌率は、これまでのプロバイオティクスの研究と比較して低値であった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
細菌の定着は、手指や環境を介した伝播により発生することは周知の事実であり、耐性菌による場合はその伝播はアウトブレイクにつながり重大な状況となる。整腸剤として知られるプロバイオティクスは時に菌血症を合併することがあり、注意が必要である。本論文では Bifidobacterium infants、B. lactis、Streptococcus themophilus の 3 菌からなるプロバイオティクスを指標に、交差感染による保菌状況を調査し、非投与群での保菌率は 8%と低値であった。過去の報告 35%~40%に較べて極めて低く、交差感染が少ないことが示唆されたが、その理由として、①コット間の間隔や配置における環境面、②80%以上の手指衛生コンプライアンスが、その要因であるとしている。
監訳者注:
※プロバイオティクス(probiotics):腸内細菌と種々の疾患の発生メカニズムとの関連で、プロバイオティクスは注目され、生体への有用性と有害性の両面で議論されている。「プロバイオティクス(probiotics)は、抗生物質(antibiotics)に対比される言葉で、共生を意味するプロバイオシス(probiosis)(pro:共に、~のために、biosis:生きる)を語源としている。英国の微生物学者 Fuller による 1989 年の定義「腸内フローラのバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物」が広く受け入れられている(ヤクルト中央研究所ウェブサイトより)。
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