集中治療室においてカルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)が定着したシンク排水管の汚染除去法としての酢酸使用と、CPE 感染症に対するその効果★★

2019.05.10

Acetic acid as a decontamination method for ICU sink drains colonized by carbapenemase-producing Enterobacteriaceae and its effect on CPE infections


D. Smolders*, B. Hendriks, P. Rogiers, M. Mul, B. Gordts
*Ziekenhuis Netwerk Antwerpen, Belgium
Journal of Hospital Infection (2019) 102, 82-88
背景
カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌(CPE)は新興病原体であり、公衆衛生にとって重大な懸念をもたらしている。ベルギーにおいて、OXA-48 カルバペネマーゼ耐性遺伝子が最も高頻度で同定されている。集中治療室(ICU)のシンク排水管には、グラム陰性菌の定着が発生することが知られている。ICU における環境汚染と CPE 感染症との関連は確立されている。特定の ICU における CPE の長期流行は制御が難しいことが示されている。
方法および結果
ICU の病室にあるほとんどすべてのシンクから、いずれも OXA-48 耐性遺伝子を有する様々な CPE 株が分離された。25%酢酸 250 mL を用いて週 3 回シンクの汚染除去を行うこととした。シンク排水管への定着について、その後最長 6 か月にわたり追跡調査を行った。CPE の定着が認められたシンクの数と、CPE の保菌または感染が認められた患者の人数の両方において、流行が根絶されたと考えられるレベルにまで大幅な減少がみられた。すべての分離株について、汚染除去に使われるのと同等またはそれ以下の濃度の酢酸により in vitro 増殖が阻止された。疫学分析により、汚染されたシンクと ICU の入室患者における CPE 獲得との間に正の有意な関係が示され、このことから汚染されたシンクが流行の環境リザーバとして重要であることが示唆された。
結論
酢酸を用いたシンク排水管の汚染除去は、加熱シンクや水を用いない患者ケア(訳者注:手洗いシンクを廃止して速乾性手指消毒剤のみの手指衛生を主体とする患者ケア)などといった他の方法に代り得る有用な代替法であり、特に他の選択肢が短期的に利用できない場合に有用である。酢酸は安価で、広く入手しやすく、効果的であり、安全性および技術的な観点から管理が容易である。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ベッドサイドの手洗いシンクの汚染は CPE の供給源となり、感染の重要なリスク因子となることが報告されている。シンクの排水管への CPE の定着により、エアロゾル化した菌により伝播することが判明している。本論文では、25%の酢酸にによるシンクの排水管処理により、シンク配水管からの CPE の検出率の減少と共に新規 CPE 患者が減少し、酢酸処理の効果が認められた。25%と高濃度の酢酸が必要なのは、配水管中のサイホン内の水で希釈されるためである。

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