消毒薬および生体消毒薬に対する感受性低下は医療環境におけるリスクか? 主張・反論形式の総説★★

2014.08.31

Is reduced susceptibility to disinfectants and antiseptics a risk in healthcare settings? A point/ counterpoint review


S. Harbarth*, S. Tuan Soh, C. Horner, M.H. Wilcox
*Geneva University Hospitals and Medical School, Switzerland
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 194-202
背景
生体消毒薬が広範かつ多量に使用されていることを考慮すると、それらの使用の影響に関する大規模な研究が、特に診療の場においてほとんど行われていないことは驚嘆すべきである。読者らの見解によるが、このことは、生体消毒薬に対する感受性低下や、特に全身投与される抗菌薬に対する交差耐性がこの感受性低下によってもたらされているのではないかといったことは、懸念すべき問題ではないという確信を反映しているか、またはその潜在的脅威についての知識が相対的に欠如していることの反映のいずれかであろう。
目的
この主張・反論形式の総説では、「医療環境での消毒薬・生体消毒薬に対する感受性低下を憂慮すべきか?」という問いに対して、種々の見解および考え得る解答を提示する。
方法
このテーマは、2013 年 5 月 4 日に米国ジョージア州のアトランタで開催された「SHEA Spring Conference 2013:Advancing healthcare epidemiology and the role of the environment(医療疫学の前進と環境の役割)」での MHW(主張)と SH(反論)によるディベートの主題である。本総説は、ディベートで提示された主要テーマに関する全般的な発表内容であり、文献のシステマティックレビューではない。
結果
診療の場で生体消毒薬に対する感受性が低下していることを示す実例が存在するが、現時点では、生体消毒薬に対する感受性低下が重要な臨床的問題であることを示す強いエビデンスはない。殺生物活性を有する成分の使用が適応となると考えられる状況が増加していることを考慮すると、感受性低下が生じる可能性は依然として懸念事項である。
結論
生体消毒薬への曝露後でも生存可能な細菌株の選択が生じるのかといった、微生物学的または臨床的に意図せぬ影響を評価するサーベイランス研究に沿って、生体消毒薬の臨床使用は変更すべきであろう。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
方法にも記載されているとおり、本論文は 2013 年に開催された SHEA Spring Conference 2013 でのディベートを総説としてまとめたものである。執筆者は網羅的なレビューではないとしているが、テーマに沿った論文が数多く紹介されており、まとめて勉強するよい機会である。

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