アイルランドにおける初めての OXA-48 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)アウトブレイクに関する調査★

2014.05.31

Investigation of the first outbreak of OXA-48-producing Klebsiella pneumoniae in Ireland


C. Wrenn*, D. O’Brien, D. Keating, C. Roche, L. Rose, A. Ronayne, L. Fenelon, S. Fitzgerald, B. Crowley, K. Schaffer
*St Vincent’s University Hospital & UCD School of Medicine and Medical Science, Ireland
Journal of Hospital Infection (2014) 87, 41-46
背景
欧州では、カルバペネマーゼ産生腸内細菌科(CPE)の検出が増加している。欧州疾病予防管理センター(ECDC)は 2010 年 11 月、アイルランドの CPE 発生状況を「散発的」に分類した。
目的
アイルランドの 3 次紹介病院で、初めての OXA-48 産生肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)によるアウトブレイクが発生した。本事例の疫学的・分子疫学的解析について報告する。
方法
臨床検体およびスクリーニング検体から、16 株の OXA-48 産生 K. pneumoniae が検出された。これらの分離株をパルスフィールド・ゲル電気泳動法(PFGE)および multi-locus sequence typing(MLST)により分析した。
結果
タイピング解析から、2 つのアウトブレイク株が病院内で蔓延していることが判明した。一方は外科の患者、もう一方は内科の患者に認められたが、「内科株」である ST13 は、すでに世界中に拡散していることが判明しているクローンであった。しかしながら「外科株」である ST221 は、OXA-48 保有株としてこれまで報告されたことがなかった株であった。
結論
外科病棟でのアウトブレイクは、厳格な感染対策を実施することによって制御に成功したが、「内科株」である OXA-48 K. pneumoniae 保菌患者の断続的な発生はその後も持続した。今回のアウトブレイクの経験は、ダブリン地域では OXA-48 K. pneumoniae が低水準ながら地域的な流行を生じていることを示していた。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
腸内細菌科の細菌がカルバペネム系に耐性を獲得する機序には、KPC や NDM-1 のほか、オキサシリナーゼ(OXA)産生があるが、OXA 中では OXA-48 が多いとされる。OXA-48 産生株は、カルバペネム系耐性であるにもかかわらず、その MIC があまり高くない場合がみられ、さらに基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生を伴っていなければ第三世代セファロスポリンに対する MIC も低い。このため薬剤感受性の結果では気づかれないまま、伝播が生じてしまう可能性がある。わが国で初めて検出されたのは 2012 年とされるが、東南アジアからの輸入例であり、OXA-48 産生 K. pneumoniae と大腸菌(Escherichia coli)を同時に有していた(Jpn J Infect Dis 2013;66:79)。本報告においては、初出例ではカルバペネマーゼ産生が疑われなかった点、最終的に封じ込めを確認できなかった点、さらに認識されないまま地域的な流行を生じているという点は、重大な課題として認識されねばならない。

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