不確実な状況下での病院アウトブレイクへの対処法の決定
Structuring our response to hospital outbreaks under conditions of uncertainty
Michael R. Millar*
*Royal London Hospital, Barts and the London NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2014) 86, 90-94
背景
手に入れたい情報が全部そろっていない状況で、われわれはしばしば意思決定を行わなければならない。感染制御専門家も、患者の転帰にどう影響が出るか不確実な状況で、アウトブレイク(保菌・感染)に直面することはまれではない。アウトブレイクの深刻さが不明な段階で、相応な対処法をいかにして決定すればよいであろうか?
目的
脅威がもたらす実際の影響がかなり不明な状況で、新型パンデミックインフルエンザウイルスのように、深刻と予想される脅威への対処法を決定する方法として、欧州連合(EU)は予防的アプローチ法を策定した。本稿では、大きな不確実性を伴うアウトブレイクへの対処法を決定するうえでの、本アプローチの有用性を評価する。
方法
EU のアプローチ法は、行動が相応であること、恣意的でないこと、一貫していること、費用対効果を考慮していること、および行動の事後評価を行うことを求めており、また科学的根拠を提供して情報の重大なギャップを埋めていく責任者を決める必要があるとしている。本稿では、多剤耐性アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)のアウトブレイクの管理を例に挙げ、感染予防・制御のためにどのような予防的アプローチ法を用いるかについて述べる。
結果・結論
アウトブレイクが転帰に及ぼす影響が不明確である場合でも、予防的アプローチ法を用いれば、病院アウトブレイクに対して体系的にしっかりした対処法を決定できると考える。最も重要なことは、どのリスクが優先的に制御されるべきなのか、不確かではあるが意思決定のために不可欠な情報は何か見極めることと、さらに情報を収集する責任者を明確にすることである。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
院内ないし施設内で何らかの感染症の集団発生の兆候を認めた場合、われわれは不確実な状況下で対応策を決定していかねばならない。常にこのような状況に置かれているといっても過言ではないが、その時点において、この対応でよいのかと心中疑問を抱きながら対処しているのも事実である。EU の予防的アプローチ法は、具体的な対応策そのものを示すものではない。しかしながら感染対策担当者が眼前の限定された情報から(しかも状況に拘泥され過ぎることなく)、適切な対応策を客観的に決定してゆく過程で有力なツールになると考える。
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