ESBL 大腸菌(Escherichia coli)感染のリスク因子:医師は保菌歴を有する患者の感染を予測できるか?
Risk factors for developing ESBL E. coli: can clinicians predict infection in patients with prior colonization? T. Goulenok*, A. Ferroni, E. Bille, H. Lécuyer, O. Join-Lambert, P. Descamps, X. Nassif, J-R. Zahar *Hôpital Necker-Enfants Malades, France Journal of Hospital Infection (2013) 84, 294-299
背景
基質特異性拡張型 β-ラクタマーゼ産生大腸菌(extended-spectrum β-lactamase-producing Escherichia coli;ESBLEC)による病院内感染が増加している。ESBLEC 保菌・感染のリスク因子が報告されているが、保菌歴を有する患者における ESBLEC 感染のリスク因子に関する情報は不足している。
目的
ESBLEC 保菌患者における感染のリスク因子を特定すること。
方法
2007 年から 2010 年にパリの Hôpital Necker-Enfants Malades で後向き研究を実施した。多変量モデルを作成し、ESBLEC 保菌が記録された後に ESBLEC 院内感染を認めた患者群と、ESBLEC 保菌患者である対照群との比較を行った(症例対照デザイン)。
結果
対象患者は合計 118 例で、このうち保菌と感染を有する患者は 40 例(成人 26 例、小児 14 例)、保菌のみの患者は 78 例(成人 51 例、小児 27 例)であった。保菌から感染までの期間中央値は 12.5 日(25% ~ 75%CI 5 ~ 40日)であった。ESBLEC 感染症として、尿路感染症(85%)、菌血症(7.5%)、および下気道感染症(7.5%)が認められた。多変量解析により、感染前の β-ラクタム系薬/β-ラクタマーゼ阻害薬投与(オッズ比[OR]3.2、95%CI 1.073 ~ 9.864、P = 0.037)および尿道カテーテル使用(OR 5.2、95%CI 1.984 ~ 13.569、P = 0.0008)が、保菌患者の ESBLEC 感染のリスク因子であることが示された。
結論
このようなリスク因子を特定することは、院内感染発生時に ESBLEC に対する抗菌薬投与が必要となる ESBLEC 保菌患者の特定に有用であると考えられる。特定の抗菌薬の使用を制限すること、および尿路カテーテル使用期間の管理が ESBLEC 感染の予防に有用と考えられる。
監訳者コメント:
保菌が感染に転じるときのリスク因子に注目した論文である。多変量解析では、感染前の β-ラクタム系薬/β-ラクタマーゼ阻害薬投与のみ有意差を示し、セファロスポリン、カルバペネム、アミノグリコシドなどでは有意差は示さなかった。本論文中でも触れられているが、ESBLEC の治療にはカルバペネムが選択されることが多く、β-ラクタム系薬/β-ラクタマーゼ阻害薬を投与することはむしろリスクであると考えられている。投与に至った背景については、論じられていなかった。
尿路カテーテルは、感染/保菌のリスク因子として知られており、挿入期間の長期化がリスク因子であるというのは、とても理解できる。ちなみに、この論文では、挿入期間は保菌群で 0.6 日、感染群で 4 日(中央値)であった。
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