イタリアの SPIN-UTI ネットワークのデータにみられる医療関連感染の傾向、リスク因子、および転帰★
Trends, risk factors and outcomes of healthcare-associated infections within the Italian network SPIN-UTI
A. Agodi*, F. Auxilia, M. Barchitta, S. Brusaferro, D. D’Alessandro, O.C. Grillo, M.T. Montagna, C. Pasquarella, E. Righi, S. Tardivo, V. Torregrossa, I. Mura, GISIO-SITI
*University of Catania, Italy
Journal of Hospital Infection (2013) 84, 52-58
背景
医療関連感染(HAI) サーベイランスのデータを踏まえた感染制御対策を実施することによって、HAIを予防することができる。サーベイランスと集中治療室(ICU)の患者の HAI 減少との間に関連が認められているが、この改善の理由はいまだに不明である。
目的
Italian Nosocomial Infections Surveillance in Intensive Care Units ネットワーク(SPIN-UTI)の 6 年間にわたるプロジェクトの 3 回の調査における HAI 発生率の変化を評価すること、および参加 ICU 65 施設での HAI 指標のばらつきの要因を調査すること。
方法
患者を対象とした HAI サーベイランスにあたっては、SPIN-UTI ネットワークは欧州のプロトコールを採用した。調査ごとに累積発生率、発生頻度、デバイス日で補正した感染率、およびデバイス使用率を算出し、比較した。多重ロジスティック回帰分析によりリスク因子を特定した。粗超過死亡率を、HAI 患者と非 HAI 患者の粗致死率の差として算出した。
結果
ICU 感染のリスクは、第 3 期の調査では過去 2 回の調査と比較して増加した(相対リスク 1.215、95%信頼区間 1.059 ~ 1.394)。リスク因子のうち、他の病棟からの ICU 入室患者の割合は 73.7%から 78.1%に、Simplified Acute Physiology Score II は 37.9 から 40.8 に増加した。死亡率に変化はみられなかったが、HAI 患者の死亡の相対リスクは増加し、第 3 期には 3 を超えた。微生物の報告頻度は、アシネトバクター・バウマニー(Acinetobacter baumannii)が第 3 期には最も高かったが(16.9%)、第 1 期は 3 番目(7.6%)、第 2 期は 2 番目(14.3%)であった。
結論
本研究では HAI リスクが増大していることが判明したが、その理由の一部は、ICU 入室を要する入院患者の疾患重症度の上昇およびその患者数の増加によって説明された。また、気管内挿管手技や人工呼吸器装着患者の管理が、ICU で上昇している HAI リスクの低下を図るための感染制御介入の標的となり得ることが明らかとなった。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
米国同様、欧州でもアシネトバクター・バウマニーが医療関連感染の脅威となっていることがうかがわれる。恒常的な ICU 感染サーベイランスの実施と、それを集計して公開し、各施設で比較により改善に結びつけることがそもそもの感染サーベイランスの目的であり、自施設の状況を周囲と比較できることが何よりの改善の契機を生むことになる。
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