英国の地域病院における基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ産生腸内細菌科細菌の疫学:観察研究

2012.08.31

Epidemiology of extended-spectrum beta-lactamase-producing Enterobacteriaceae in a UK district hospital; an observational study


D.A. Enoch*, F. Brown, A.W. Sismey, D.A. Mlangeni, M.D. Curran, J.A. Karas, D.B. Cone, S.H. Aliyu, H. Dhanji, M. Doumith, S. Maharjan, D. Meunier, N. Woodford
*Peterborough City Hospital, UK
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 270-277
背景
基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)は、グラム陰性菌の耐性の原因としての重要性が世界的に高まっている。
目的
英国の病院における ESBL 産生腸内細菌科細菌による感染症の臨床疫学および分子疫学を調査し、産生される ESBL の種類および耐性獲得のリスク因子を明らかにすること。
方法
2008 年 7 月から 2009 年 6 月に何らかの臨床検体から ESBL 産生腸内細菌科細菌が検出されたすべての患者を対象として、質問票による前向き調査を実施した。API20E を用いて菌の同定を行った。感受性試験は BSAC ディスク拡散法、ESBL 産生についてはセフポドキシム-クラブラン酸 double disc synergy test により評価した。PCR 法により、blaCTX-M 遺伝子を対象とした分離菌株サブセットのスクリーニング、大腸菌(Escherichia coli)分離株の系統発生群への分類、および尿路病原性 ST131 型に属する株の同定を行った。
結果
腸内細菌科細菌が認められた臨床検体からの ESBL 産生菌検出率は1%であった。患者 124 例から検出された ESBL 産生菌の内訳は、大腸菌(105 例)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(12 例)、その他(7 例)であった。特定された主なリスク因子は、最近の抗菌薬使用(93%)および尿道カテーテル留置(24%)であった。優勢な ESBL は CTX-M-1 型であった(検査した分離株 78 株中 59 株、76%)。大腸菌の半数以上(検査した 56 株中 35 株)は系統群 B2 であり、このうち 23 株は ST131 クローンに属していた。系統群 D が 12 株、系統群 A および B1 がそれぞれ 4 株であった。
結論
ESBL 産生菌はケンブリッジシャー北西部では検出頻度は低いが重大な問題である。ESBL 陽性分離株の 75%に CTX-M 型 ESBL が認められた。2 例を除くすべての患者が、既知のリスク因子を 1 つ以上有していた。本研究は不適切な尿道カテーテル留置および抗菌薬処方を減少させる介入が必要であることを示している。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
ESBL 産生菌検出のリスク因子は、これまでの知見により、長期入院、尿道カテーテル、第三世代セフェム系抗菌薬の投与が知られており、本論文でも ESBL 産生菌検出率の減少には尿道カテーテル留置と抗菌薬処方への介入が必要であると示唆されている。とはいえ、院内での伝播を防ぐための接触予防策の徹底がまずありきであろう。

監訳者注:
BSAC:The British Society for Antimicrobial Chemotherapy

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