韓国における医療関連肺炎および手術部位感染の原因菌である市中獲得型 Pantone-Valentine 型ロイコシジン陰性メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)クローン(ST72-MRSA-IV)★★

2012.07.31

Community-associated Pantone–Valentine leukocidin-negative meticillin-resistant Staphylococcus aureus clone (ST72-MRSA-IV) causing healthcare-associated pneumonia and surgical site infection in Korea


E.-J. Joo*, D.R. Chung, Y.E. Ha, S.Y. Park, S.-J. Kang, S.H. Kim, C.-I. Kang, K.R. Peck, N.Y. Lee, K.S. Ko, J.-H. Song
*Sungkyunkwan University School of Medicine, Republic of Korea
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 149-155
背景
市中獲得型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(community-associated meticillin-resistant Staphylococcus aureus;CA-MRSA)は、重要な病原体として各大陸で固有の分布を示しつつ、世界的に拡大している。USA300 以外の CA-MRSA による感染の臨床的特性、特に医療施設内での特性は、十分に明らかにされていない。
目的
後向きコホート研究により、韓国の主要な CA-MRSA クローンである Pantone–Valentine 型ロイコシジン(PVL)陰性、複数部位塩基配列タイピング(MLST)による配列型(ST)72、ブドウ球菌カセット染色体 mec(SCCmec)IV 型による感染の臨床的特性を明らかにすること。
方法
MRSA 分離株 4,667 株の中から、フルオロキノロン系、ゲンタマイシン、リファンピシン、および cotrimoxazole 感性の ST72-IV 分離株を仮同定し、次いで SCCmec タイピング法および MLST 法により確定した。ST72-IV 感染を認める合計 124 症例を分析対象とした。
結果
ST72-IV 感染の各年の発生率は、2007 年から 2009 年にかけて入院 100,000 件あたり 45.5 例から 66.3 例に増加した。最も頻度が高い感染のタイプは、皮膚・軟部組織感染(46.0%)で、次いで肺炎(27.4%)、骨・関節感染(9.7%)であった。手術部位感染は、市中発症型医療関連感染の 22.6%および病院発症型感染の 32.5%を占めていた。病院発症型感染の中で最も頻度が高かったのは肺炎であった(45.0%)。多変量解析から、肺炎は他のタイプの感染と比較して、全原因死のオッズを上昇させることが示された(オッズ比 18.8;95%信頼区間 2.6 ~ 133.9)。
結論
韓国では ST72-IV による市中発症型感染および病院発症型感染の各年の発生率が増加傾向にあることが判明した。肺炎は病院発症型感染の中で最も頻度が高く、死亡率の上昇と関連していた。これらの結果は、CA-MRSA の時代において抗菌薬療法や感染管理を成功させるうえで重要な意義を有する。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント
SCCmec タイピング法および MLST 法の併用による MRSA の流行株の同定が主流になりつつある。現実的にこれらを特定するにはシークエンサーが必要であり、臨床の現場には課題を残す。韓国は日本に隣接しているため、九州地方等から輸入され国内流行する可能性もあり、注目される。

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