メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の発色酵素基質培地の評価:感度か、所要時間か?
Evaluation of chromogenic meticillin-resistant Staphylococcus aureus media: sensitivity versus turnaround time
K. Morris*, C. Wilson, M.H. Wilcox
*Leeds Teaching Hospitals NHS Trust, UK
Journal of Hospital Infection (2012) 81, 20-24
背景
発色酵素基質培地により、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(meticillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)の検出能が向上する可能性がある。臨床環境でのインキュベーション時間にはばらつきがあり、通常は 16 時間から 48 時間である。
目的
市販の発色酵素基質 MRSA 培地の性能に対するインキュベーション時間の影響を調べること。
方法
まず、日常的なスクリーニングのスワブからの MRSA 分離株を対象として、ChromID MRSA(bioMérieux)を用いた 16 ~ 23 時間と 22 ~ 24 時間のインキュベーションによる早期回収率を比較した。また、スクリーニングスワブ 6,035 個を対象に、MRSA 選択培地として ChromID MRSA、ChromID MRSA V2(bioMérieux)、Brilliance MRSA 2 Agar(Oxoid)、およびColorex MRSA(E&O Laboratories Ltd)の比較を行った。
結果
ChromID MRSA 培地を用いて 48 時間後に検出されたMRSA 分離株数は 623 株であり、このうち同一培地で 16 ~ 23 時間後にも回収されたのは 303 株(48.6%)のみであったが、22 ~ 24 時間後に回収された分離株数は 1,018 株中 726 株(71.3%)であった。インキュベーション時間を 22 ~ 24 時間とした場合に、発色酵素基質反応陽性の分離株は 50 株(4.4%)であったが、この結果は、ラテックス凝集反応によるコアグラーゼ試験および DNase 試験とは一致しなかった。これらの症例のうち、DNase 試験により非 MRSA であることが正しく同定されたのは 88%であった。最も感度が高いのは ChromID MRSA の 93.2%であり、次いで Colorex MRSA Agar(87.1%)、ChromID V2(83.7%)、Brilliance Agar(78.2%)であった。特異度は、すべての培地で 99.7%を超えていた。
結論
ChromID MRSA を用いた MRSA の早期検出には、22 ~ 24 時間のインキュベーションが最適である。この培地による MRSA 分離株の同定は、ラテックス凝集反応によるコアグラーゼ試験のみに頼るべきではない。MRSA 回収率の点では ChromID MRSA が最も優れた培地と考えられたが、所要時間が長くなる(48 時間対 24 時間)というデメリットを考慮する必要がある。
サマリー原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
様々な選択培地の品質管理の課題が示されている。昨今、米国では遺伝子増幅技術でこの課題に取り組む傾向があるが、遺伝子増幅では菌株を保存することができないという別の課題も残る。
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