世界保健機関が推奨する手術時手指消毒用製剤の評価および有効性改善の提案

2011.10.30

Testing of the World Health Organization-recommended formulations for surgical hand preparation and proposals for increased efficacy


M. Suchomel*, M. Kundi, B. Allegranzi, D. Pittet, M.L. Rotter
*Medical University of Vienna, Austria
Journal of Hospital Infection (2011) 79, 115-118
2009年に世界保健機関(WHO)が発表した「医療における手指衛生に関するガイドライン(Guidelines on hand hygiene in health care)」は、衛生的手指衛生および術前手指衛生のいずれについても擦式アルコール製剤を推奨している。市販製品が入手できないか高価なため使用できない医療施設に対しては、80%(v/v)エタノールベースおよび 75%(v/v)2-プロパノールベースの 2 種類の製剤を施設で調製することが推奨されている。この両製剤および著者らが提案する製剤の改良(容積ではなく重量パーセント濃度を用いる)が、次回の欧州統一規格(EN)12791 改正における有効性の要件、すなわち消毒の直後および 3 時間後の製剤の有効性が標準処置(60%[v/v]1-プロパノール、3 分間)と比較して非劣性であることに合致するかどうかを評価した。本研究では、WHO が推奨する製剤を 3 分間および 5 分間で検査した。いずれの製剤も 3 分間の処置では EN 12791 の有効性の要件に合致しなかった。それぞれの製剤の濃度を 80%(w/w)(85%[v/v])および 75%(w/w)(80%[v/v])に高めるとともに処理時間を 5 分間に延長すると、両製剤とも即時効果では標準消毒処置に対する非劣性が認められた。しかし、3 時間後では効果が認められず、標準処置に対して有意に劣性であった。元々の製剤は EN 12791 の有効性の要件に合致しなかったが、今回の知見の臨床的重要性を考慮すると、さらなる臨床試験を行う必要がある。製剤の改良としてアルコール濃度を容積から重量パーセントに変更して高め、処置時間を 3 分間から 5 分間に延長することによって、EN 12791 の要件に合致させることが可能となる。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

手指衛生に使用する擦式アルコール製剤には様々なものがあり、その組成によって薬効が大きく異なることが本論文から読み取れる。臨床現場での使用にあたっては、広く認められた薬効基準の要件に合致する製剤を使用することが必要である。また、研究的側面から言えば、今後も様々な組成が試みられ、検証されていくと思われる。それが臨床現場で使用できる製剤に反映され、改良が重ねられていくことになる。

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