遺伝子組み換えプロテアーゼによるプリオン蛋白質(BSE301V)除去
Decontamination of prion protein (BSE301V) using a genetically engineered protease
J. Dickinson*, H. Murdoch, M.J. Dennis, G.A. Hall, R. Bott, W.D. Crabb, C. Penet, J.M. Sutton, N.D.H. Raven
*Health Protection Agency, UK
Journal of Hospital Infection (2009) 72, 65-70
過去の研究でアルカリプロテアーゼによりウシ海綿状脳症プリオン(BSE301V)を不活化できる可能性が示されている。この論文では、遺伝子組換えバチルス・レンタス(Bacillus lentus)のスブチリシンMC3の使用につき検討した。BSE301V感染マウス脳ホモジネート(iMBH)をMC3で処理した。MC3は検出可能なすべての6H4免疫反応性物質をpH 10とpH 12で除去したのに対し、プロテイナーゼKはpH 12で一部のみに対して有効であった。VMマウスのバイオアッセイでは、MC3とプロテイナーゼKによる消化を受けた感染マウス脳ホモジネート接種iMBHによる生存率は、それぞれ66.6%、22.7%であった。連続希釈法による接種後生存日数の評価によれば、感染性の低下はMC3では>7 log、プロテイナーゼKでは>6 logに相当した。本研究から、医療管理におけるプリオン物質の効果的な不活化処理法として開発された熱安定性プロテアーゼの潜在的有用性が示された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
クロイツフェルト・ヤコブ病やウシ海綿状脳症などの感染性プリオンの処理は困難であることが有名であるが、最近ではわが国においても不活化のためのガイドライン(手術医学 2008; 29: S67-S71)が示されており、具体的には、アルカリ洗剤ウォッシャーディスインエクター洗浄(90~93℃)+真空脱気式高圧蒸気滅菌134℃ 8~10分間による処理、洗浄+真空脱気式高圧蒸気滅菌134℃ 18分間、アルカリ洗剤ウォッシャーディスインエクター洗浄+過酸化水素低音ガスプラズマ滅菌2サイクル(NX 1サイクル)などが示されている。わが国の特色として3% SDSによる処理も記載されているが、この処理は実際には困難であるかもしれない。この論文では熱安定性アルカリプロテアーゼの有効性が評価されている。ちなみに脳神経外科領域などで使用された医療器材について、すべてを追跡可能とする管理が推奨されたこともあったが、実際のリスクと現場への負担を秤にかけると、個人的に過剰な対策にコストをかけるのは得策でないと考えている。
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