イタリアのリグーリアでの病院感染サーベイランス:成人および小児の急性期ケア病院における地域有病率調査の結果★
Surveillance of hospital-acquired infections in Liguria, Italy: results from a regional prevalence study in adult and paediatric acute-care hospitals
P. Durando*, G. Icardi, F. Ansaldi, P. Crimi, C. Sticchi, F. Compagnino, P. Fabbri, I. Baldelli, D. Bellina, R. Sacco, M. Assensi, N. Cenderello, G. Orengo, P. Oreste, M. Nannini, C. Olivari, O. Campora, M. Vizio, the Collaborative Group for the Prevalence Survey on Hospital-Acquired Infections in Liguria
*University of Genoa and San Martino University Hospital of Genoa, Italy
Journal of Hospital Infection (2009) 71, 81-87
2007年3月19日から4月6日に、イタリアのリグーリアで複数の病院を対象とした病院感染有病率調査を実施した。この調査は当該地域で実施された初めてのものである。現在29施設ある急性期ケア公立病院の25施設が調査に参加した(86.2%)。計3,176例の患者をこの調査に登録したが、この数字は地域の平均病床利用率の約70%に相当した。患者283例で310件の病院感染が診断され、全体の有病率は感染件数では9.8%、症例数では8.9%であった。有病率は病院間で大きく異なり、0%から24.4%の範囲であった[95%信頼区間(CI)15.53~33.27]。相対的な頻度が最も高かったのは尿路感染症(30.0%)と呼吸器感染症(26.1%)で、次いで血流感染症(14.8%)、手術部位感染症(11.6%)、消化管感染症(6.5%)であった。病棟別の病院感染症有病率が最も高かったのは集中治療室(42.5%、95%CI 34.48~50.52)および血液腫瘍科(13.3%、95%CI 6.28~20.32)で、頻度が高い感染症は呼吸器感染症および血流感染症であった。脊髄病棟(33.3%、95%CI 13.14~53.46)および機能回復リハビリテーション病棟(18.9%、95%CI 17.75~24.06)では、尿路感染症発症率が高かった。単変量解析および多変量解析により、全体または病棟ごとの院内感染に関連する主要なリスク因子と状態について評価した。この調査により、リグーリアの病院感染の疫学の全体像が明らかになり、将来のサーベイランスおよび感染制御プログラムを立案・計画するための出発点として有効に活用できると考えられる。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
本来的に医療関連感染症サーベイランスは現場におけるケアの実践レベルを保証するための継続的質改善活動であるが、地域における医療関連感染症の実態を明らかにする目的からは、期間を限定して入院患者における感染症すべてを対象に調査することによって有病率を導く包括的サーベイランスの手法が用いられることがある。場合によっては1日限りの調査による点有病率を求めて指標とすることがあり、韓国などで全国調査が実施されている。これまでの調査によれば、一般的に急性期ケア病院の入院患者の5%から10%が何らかの医療関連感染症を経験するとされており、この論文も同様の結論となっている。
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