集中治療室および手術室におけるパンデミックインフルエンザ A(H1N1)2009:職員のワクチン接種に対する信念および姿勢★

2011.08.30

Pandemic influenza A (H1N1) 2009 in a critical care and theatre setting: beliefs and attitudes towards staff vaccination


H.M. Parry*, S. Damery, A. Fergusson, H. Draper, J. Bion, A.E. Low
*University Hospitals Birmingham, UK
Journal of Hospital Infection (2011) 78, 302-307
英国、ウエストミッドランド州ではパンデミックインフルエンザ A(H1N1)2009(pH1N1)の影響が顕著であった。現場の医療従事者に対しては、易感染性患者への伝播防止、病期欠勤の最少化、および職員の保護を目的としてワクチン接種が行われた。上気道の診療に当たる医療従事者は、特にエアロゾル曝露のリスクが高い。著者らは、これらの医療従事者の pH1N1 ワクチン接種に対する姿勢、すなわち接種を受ける主な理由、接種を阻む障壁、および pH1N1 に関する知識について評価した。ワクチン導入から 1 か月後に、ウエストミッドランド州の国民保健サービス(NHS)トラストの 2 病院で任意・匿名の質問票調査を実施した。評価可能な回答は合計 187 件(回答率 60.5%)であり、このうちワクチン接種を受けた、または受ける意思があるとしたのは 43.8%であった(82 名)。ワクチン接種の主な障壁は、長期的副作用への懸念であった(37.4%、70 名)。ワクチン接種を受ける主な理由は、自分自身の防御(36.9%、69 例)、家族の防御(35.3%、66 例)、および患者の防御(10.2%、19 例)であった。ワクチンに対して安全性確認のための厳格な臨床試験が適切に実施されたことに確信がもてないとした回答者は 76.5%、報告されている有効性を正しく把握している回答者は 20.9%であった。結論として、高リスクの医療従事者の pH1N1 ワクチン接種率は依然として低かったものの、季節性インフルエンザのワクチン接種率の最大値の 2 倍であった。医療従事者のワクチンの有効性に関する知識は不十分である。パンデミック宣言からワクチン導入までの期間が短かったため、安全性プロファイルへの懸念がワクチン接種の障壁の 1 つとなっていた。副作用は、急性と慢性のいずれもワクチン接種の重大な障壁であった。今後のパンデミックの際は、ワクチンの安全性と有効性に関する十分な保証と教育を実施することによって接種率が向上すると考えられる。


サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

日本と異なり、欧米諸国ではインフルエンザワクチンの安全性や副反応に対する懸念が非常に強く、医療従事者のインフルエンザワクチン接種率向上への大きな障壁になっている。この論文は、インフルエンザ(H1N1)2009 のワクチン接種の検討より、その傾向が新型インフルエンザでもみられることを述べている。接種率が向上しない場合は、ワクチンの安全性や効果とその限界について医療従事者への十分な情報提供が必要であろう。

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