メチシリン耐性黄色ブドウ球菌:オーストリアの2カ所の急性期病院における新たなspaタイプの発生★

2007.12.31

Meticillin-resistant Staphylococcus aureus: occurrence of a new spa type in two acute care
hospitals in Austria


W. Ruppitsch*, A. Stoger, O. Braun, B. Strommenger, U. Nubel , G. Wewalka, F. Allerberger
*Austrian Agency for Health and Food Safety, Austria
Journal of Hospital Infection (2007) 67, 316-322
分子生物学的手法を用いた多剤耐性菌のタイピングは、国の公衆衛生局の最優先課題である。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のルーチンのタイピングが2005年にオーストリアで開始され、プロテインA遺伝子の可変領域X(spa)のシークエンス解析、mec遺伝子群(SCCmec)の特性評価、およびPantone-Valentineロイコシジン(PVL)、エンテロトキシン、トキシックショック症候群毒素(TSST-1)、表皮剥離毒素遺伝子の検査を実施した。新規に同定されたt2023タイプを含む10種類の異なるspaタイプが、同一経営下の隣接する2病院由来の66株のMRSA臨床分離株から検出された。spaタイプt2023は、2005年12月に病院Aで最初に分離され、2006年には主流なspaタイプとなった(16分離株中9株)。病院Bでのt2023タイプの発生は依然として孤発的な事例であり、疫学的に病院Aからの転送患者と関連している可能性があった。spaタイプt2023は、spaタイプt001と極めて類似している。病院Aで分離されたspaタイプt001の菌株が示したエンテロトキシン遺伝子パターン、multilocus sequence type(MLST)法およびSmaIによるマクロ制限酵素(macrorestriction)パルスフィールド・ゲル電気泳動(PFGE)パターンは、t2023のものと識別不能であった。疫学的相違から、感染制御策によりMRSAの交差伝播を防止できることが示唆された。病院Bのほうが病院Aよりも厳しいMRSA隔離策を導入しており、患者数に対する看護師数の比率が高く、感染制御に多くの医療予算を拠出していた。
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監訳者コメント:
MRSAのタイピングは、MRSAがどこから由来し、どのような進化をとげ、現在のように分布生息しているのかを探るために重要であるが、シークエンスタイピングは識別能力が低いものの、安定性の高さから、院内での疫学には向かず、経年的かつ地理的に広範囲をカバーする分子疫学には向いている。PFGEは識別能力が高いものの、安定性に課題があるため、比較的小規模なセッティング(ICUや病棟レベル)の疫学に適している。最後のメッセージである、「医療資源を投入しなければ、MRSAを制御することはむずかしい」という部分は、感染制御に携わるすべての人々にとって、実感するとことであろう。

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