ロシア北西部の小児病院における病院感染と抗菌薬使用の点有病率調査★★

2007.08.31

A point prevalence survey of hospital-acquired infections and antimicrobial use in a paediatric
hospital in north-western Russia


A. Hajdu*, O.V. Samodova, T.R. Carlsson, L.V. Voinova, S.J. Nazarenko, A.V. Tjurikov, E.G. Petrova, A.V. Tulisov, S. Andresen, H.M. Eriksen
Norwegian Institute of Public Health, Norway
Journal of Hospital Infection (2007) 66, 378-384
2006年2月に、ロシア北西部のアルハンゲリスクの小児病院において、病院感染と抗菌薬使用について1日の点有病率調査を実施した。18歳以下の患児合計472例を研究の対象とし、そのうちの395例(84%)が調査日の時点で48時間以上入院していた。後者の患者群の病院感染有病率は17%[395例中67例、95%信頼区間(CI)13.8~21.2%]で、最も多い診断は上気道感染症(45%)、次いで下気道感染症(19%)と尿路感染症(12%)であった。1歳未満の患児と入院が10日を超える患児で、病院感染率が最も高かった。入院患児全体の39%(472例中183例、95%CI 34.5~43.2%)が抗菌薬投与を受けていた。抗菌薬処方全体の39%(211件中82件)がセファロスポリン系で、次いでペニシリン系(22%、211件中46件)であった。本研究により、病院感染および病院内の抗菌薬使用についてのサーベイランスのベースラインが明確になり、目標を絞った感染制御策の導入が促進されることとなった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
小児病院における病院感染の点有病率調査を行った報告である。病院感染有病率17%は感覚的には高いが、この病院の特性やロシアの医療制度などによるものかもしれない。また、本研究により目標を絞った感染制御策の導入が促進された、とあるが、上気道感染症を制御するための換気など限られた対策にしか言及されていない。この施設における病院感染のベースラインを明確にした点では評価できる研究であるが、このような研究はかなりの量の人的資源を必要とする。定期的に実施することが果たして適切かどうか、検討の余地がありそうだ。点有病率調査は手法としては簡単であり、実施している、あるいは実施を検討している日本の医療施設も少なくないと思われるが、本研究はその実施の適否を検討する資料となる。

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*Isala, Laboratory of Clinical Microbiology and Infectious Diseases, The Netherlands
Journal of Hospital Infection (2020) 105, 691-697

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