院内感染の減少を目的とした全国的規模の院内感染サーベイランスシステムの有効性

2006.09.30

Effectiveness of a nationwide nosocomial infection surveillance system for reducing nosocomial infections


P. Gastmeier*, C. Geffers, C. Brandt, I. Zuschneid, D. Sohr, F. Schwab, M. Behnke, F. Daschner, H. Ruden
*Medical University Hannover, Germany
Journal of Hospital Infection (2006) 64, 16-22
近年、複数の国々が院内感染のサーベイランスシステムを全国的規模で構築している。これらの全国的なサーベイランスシステムの有効性に関して、公表されている情報は乏しい。本研究の目的は、ドイツの全国的院内感染サーベイランスシステム(Krankenhaus Infektions Surveillance System;KISS)に参加することによって、院内感染率が低下するかを調査することであった。集中治療室(ICU)での人工呼吸器関連肺炎と中心静脈カテーテル関連の一次性血流感染、および外科入院患者の手術部位感染の3種類の主要な院内感染について検討した。1997年1月から2003年12月にかけてデータを収集した。KISSに36カ月以上参加した医療機関のみを解析の対象とした。サーベイランスの最初の12カ月間のデータを、次の12カ月間およびその次の12カ月間のデータと比較した。150カ所のICUと133カ所の外科部門が選択基準を満たした。KISSに参加した最初の1年目は、ICUにおける平均の人工呼吸器関連肺炎発症率は1,000人工呼吸器・日あたり11.2、カテーテル関連の一次性血流感染の率は1,000カテーテル・日あたり2.1であった。外科入院患者における平均の手術部位感染率は、参加1年目は手術100例あたり1.6であった。3年目の感染率を1年目と比較すると、人工呼吸器関連肺炎の相対リスク(RR)は0.71[95%信頼区間(CI)0.66~0.76]、カテーテル関連原発性血流感染のRRは0.80(95%CI 0.72~0.90)であり、手術部位感染のRRは0.72(95%CI 0.64~0.80)であった。KISSへの参加は、これら3種類の院内感染の有意な減少と関連があった。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
ドイツの院内感染サーベイランスに関する報告である。国別のサーベイランス成績の違いとその原因を比較することで、自国の問題点を見いだすきっかけになる場合もある。多くの国が共通のプラットフォームでデータ比較ができるシステムも今後の課題である。

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