毛細血管血糖測定器によるC型肝炎ウイルス伝播の可能性に曝露された患者の後向き研究 ★★

2006.05.31

Retrospective investigation of patients exposed to possible transmission of hepatitis C virus by a capillary blood glucose meter


Z. Kadi*, P. Saint-Laurent, J.F. Cadranel, C. Joly, P. Dumouchel, S. Jeanne, V. Thiers, O. Ciurana, P. Astagneau
*Centre de Coordination de la Lutte contre les Infections Nosocomiales, France
Journal of Hospital Infection (2006) 63, 65-69
C型肝炎ウイルス(HCV)感染に対する既知の危険因子(リスクファクター)をもたない75歳の女性が入院し、HCVセロコンバージョンと診断された(HCVイムノブロット法およびウイルス定量陽性)。疫学的調査から、この女性は糖尿病と診断された過去の入院期間中に毛細血管血糖測定器(CBGM)Glucotrend®(Roche Diagnostics、フランス)をHCV陽性が判明していた別の糖尿病患者と共用していた。この器具の使用時に、衛生上の問題がある操作が行われていた。Glucotrend CBGMの購入以来、この感染源の疑いがある患者は8回入院しており、HCV抗体陽性が判明している別の糖尿病患者19例も同病院に通院していた。そのため、感染源の疑いがある患者と同時期に入院していた糖尿病患者35例およびGlucotrend CBGMを使用した患者1,305例が、血清中のB型肝炎ウイルス(HBV)抗体、HCV抗体、およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体の検査を受けるよう要請された。35例の糖尿病患者中、検査を受けた24例に陽性患者はいなかった。その他の1,305例の患者中、995例が検査を受け、19例(2%)がHCV抗体陽性であった。この陽性率は一般のフランス人集団で報告されている陽性率よりも高いが、このリスク情報はCBGMの使用に起因するとは考えられない。さらに、分子的解析の結果、分離された2種類のHCV株は同一の系統発生群に属していなかった。しかし、このHCV感染を受けて、当該病院では血液媒介ウイルスの伝播を最小限にするための方策が実施した。French Agency for theSafety of Health Productsからの全国的な警告が、フランスの他の病院に通達された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
医療器材・器具を介した、血液媒介感染のリスクは重要な課題である。病院内で血糖測定を実施する際の器材・器具の汚染には十分注意が必要である。ことに糖尿病性腎不全で透析管理を受けている患者の場合、肝炎ウイルスに対し易感染性でもあることから注意が必要である。自己血糖測定器はあくまで個人単位での運用に限定するべきである。また、医療機関で使用する穿刺器具(穿刺補助具や穿刺針を含む)についても一体形成で完全使い捨てで安全機能のついている製品の作用が望まれる。

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