レジオネラ病:トルコにおける院内集団発生 ★★

2006.01.05

Legionnaire’s disease: a nosocomial outbreak in Turkey


I.H. Ozerol*, M. Bayraktar, Z. Cizmeci, R. Durmaz, E. Akbas, Z. Yildirim, S. Yologlu
*Inonu University, Turkey
Journal of Hospital Infection (2006) 62, 50-57
Legionella pneumophilaの院内感染が2週間の間に6例発生し、30日後にさらに1例が後向きに診断された。病院の給水系からの分離菌株は単一の喀痰由来分離菌株の関連クローンであった。職員および入院患者のレジオネラ曝露に対する血清疫学的検査を、トルコのInonu大学病院において実施した。創立8年、600床、集中式空調設備を有する施設であるが、給水系の消毒プログラムはない。合計500の血清試料(病院職員400、入院患者100)のL. pneumophila抗体のスクリーニングを、ELISAで実施した。ELISAによる抗体価が4倍上昇、間接蛍光抗体法(IFA)による抗体価高値、または尿中抗原検査陽性を、血清学的陽性例とした。ELISAで抗体価がカットオフ値よりも高かった病院職員は400例中24例(6%)、入院患者は100例中7例(7%)であった。ELISAによる血清学的陽性例を2~4週間追跡した。これらの被検者のうち、ELISAによる抗体価が4倍上昇したのは7例(職員4例、患者3例)、IFA力価の高値を示したのが6例(職員、患者、各3例)、また尿中抗原検査陽性を示した肺炎患者が3例で、その中の1例は喀痰培養も陽性であった。さらに、22カ所の給水系でL. pneumophilaの有無を培養によりスクリーニングした。L. pneumophilaは15カ所から分離された。パルスフィールド・ゲル電気泳動法による型別検査により、給水系からの分離菌株はすべて同一で、喀痰由来分離菌株の関連クローンであることが示された。給水系の過熱処理と洗浄を実行後にレジオネラ菌が再度分離されたのは4カ所であった。過熱処理と洗浄を繰り返すことにより、レジオネラ菌は完全に除去された。本研究で、L. pneumophilaの早期検出および給水系の十分な過熱処理と洗浄が、レジオネラ菌の除去および伝播抑制に有効であることが証明された。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
レジオネラ症が1例でも発見された場合、CDCの「環境の感染制御のためのガイドライン」でも、過去半年にわたり疑わしい症例がいないか、病歴調査をするように勧告している。本報告は、患者はもとより、同じ環境で就労する医療従事者を血清学的に調査し、不顕性感染例も含んで詳細に報告している点が参考になる。ヨーロッパは欧州共同体(EU)間でレジオネラ症の疫学に関するネットワークを構築して、国際的に症例の監視を続けており、参考になる(http://www.ewgli.org/)。

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