股関節骨折患者における無症候性細菌尿と手術部位感染症の関連性:システマティックレビューおよびメタアナリシス
The relationship between asymptomatic bacteriuria and surgical site infection in hip fracture patients: a systematic review and meta-analysis Rohit Ravindran Nair*, Emadeldin Mohamed Abbaker Ahmed, Kai Fung Kevin Suen, Adersh Gopinathannair, Venkat Sivaprakasam, Charalambos Panayiotou Charalambous *Blackpool Teaching Hospitals NHS Foundation Trust, Whinney Heys Road, United Kingdom Journal of Hospital Infection (2026) 175, 268-277
背景
股関節骨折患者において、無症候性細菌尿(ASB)のスクリーニングおよび治療を行うべきか否かについてはコンセンサスがない。
目的
本研究の目的は、股関節骨折患者における周術期 ASB 発生率と手術部位感染症(SSI)発生率の関連性を評価し、ASB 治療の影響を検討することであった。
方法
PubMed、CINAHL および Cochrane Library を検索し、周術期 ASB と SSI の関連性を評価した研究を特定した。メタアナリシスは、必要に応じて固定または変量効果モデルを用いて行った。本研究は International Prospective Register for Systematic Reviews に前向きに登録された(CRD42023431037)。
結果
合計 2,272 件の記録が特定され、うち 3 件の研究を組み入れた。総症例数は 247 例であった。股関節骨折患者における ASB(治療ありおよび治療なし)について報告した研究全 3 件のメタアナリシスでは、推定 SSI 発生率は 7.3%(95%信頼区間[CI]2.0 ~ 23.5%)であった。ASB の治療を受けた股関節骨折患者について報告した 2 件の研究のメタアナリシスでは、全体の推定 SSI 発生率は 13.0%(95%CI 8.1 ~ 20.3%)であった。しかし、ASB の治療が行われなかった研究 2 件では、全体の推定 SSI 発生率は 4.4%(95%CI 1.7 ~ 11.2%)であった。研究の数が少なかったため、2 群間の正式な比較は行わなかった。
結論
股関節骨折患者における ASB の管理の指針となる質の高いエビデンスは不足している。そのため、この脆弱なコホートにおいては、リスク層別化、地域の抗菌薬耐性パターンおよび迅速診断ツールを含むアプローチが検討される場合がある。また、SSI は股関節骨折患者にひどい影響を及ぼす可能性があることから、注意の原則を用いて、病院は ASB 陽性例のスクリーニングと治療を検討する場合がある。さらに、股関節骨折患者における ASB 発生率と SSI 発生率の明確な関連性を判断し、SSI 発生率の低減における ASB 治療の役割を明らかにするためには、質の高いエビデンスが必要である。
監訳者コメント:
股関節骨折患者の無症候性細菌尿(ASB)と手術部位感染(SSI)の関係を検討したレビューだが、採用されたのは 3 研究 247 例のみで、ASB 治療による SSI 予防効果は示せなかった。むしろ治療群では SSI 発生率が 13.0%と、非治療群の 4.4%より高かったが、研究背景が大きく異なるため単純比較はできない。注目したいのは、尿と SSI から同じ菌が検出されたのはわずか 1 例であり、ASB が SSI の直接原因とは言い切れない点である。著者らは慎重策として ASB のスクリーニングと治療も提案しているが、現時点のデータからその有効性が示されたわけではない。高齢の股関節骨折患者では尿培養陽性だけで抗菌薬を開始しがちだが、本研究はその妥当性を支持するものではない。術前評価では尿所見だけでなく症状を丁寧に確認し、不要な培養検査や抗菌薬投与を減らすという抗菌薬適正使用の視点が重要である。
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