ARMedプロジェクトに協力する地中海南東地域の病院による感染制御および抗菌薬管理業務の報告★★

2008.11.30

Infection control and antibiotic stewardship practices reported by south-eastern Mediterranean hospitals collaborating in the ARMed project


M.A. Borg*, B.D. Cookson, D.Gur, S. Ben Redjeb, O. Rasslan, Z. Elnassar, M. Benbachir, D.P. Bagatzouni, K. Rahal, Z. Daoud
*Mater Dei Hospital, Malta
Journal of Hospital Infection (2008) 70, 228-234
地中海南東地域の病院から報告された多剤耐性菌の保菌状況から、保菌に寄与すると考えられる因子を特定して制御対策の立案を推進する必要性が強調される。今回、地中海地域抗菌薬耐性サーベイランスおよび制圧(ARMed)プロジェクトに参加・協力している病院の感染制御および抗菌薬管理業務を評価するため、構造化質問票による調査を行った。合計45か所の病院(依頼した病院の78.9%)から質問票への回答を得た。60%の病院が、利用可能病床数が入院患者の受け入れに対応しきれない過密状態を経験したと回答しており、利用可能病床数の不足のために多剤耐性菌保菌患者の隔離が困難となる事態を生じるとの回答は62%であった。手指衛生として、主に非薬用石けんあるいは消毒用石けんによる手洗いを行っている病院が多かった。特定された問題点としては、固形石けん(28.9%)や布製タオル(37.8%)への依存のほか、シンクの位置が病床から離れていること(66.6%)などがあった。手指消毒剤として主に擦式アルコール製剤を使用していた病院は、わずか7%であった。適切な抗菌薬使用のためのプログラムは、一部の病院でしか実施されておらず、例えば抗菌薬処方に関するガイドラインがあるとの回答は33.3%、処方した医師に耐性菌発生率のフィードバックを行っている病院は53.3%であった。施設単位または病棟単位で抗菌薬使用量の監査を実施しているのは回答した病院の37.8%であった。南東地中海地域の病院では、多剤耐性菌保菌患者の隔離の改善、擦式アルコール製剤の使用拡大を図ることによる手指衛生の強化、および効果的な抗菌薬管理プログラムの導入を目的とした多面的アプローチを奨励すべきである。
サマリー 原文(英語)はこちら
監訳者コメント:
地中海地域の病院ではアルコールによる手指衛生もまだ普及が遅れているようです。今日この時にもいろいろな国の現場でいろいろな努力がなされているのですね。世界の仲間とともに頑張ろうという、国際感染管理協会IFICを代表される Dr. Borgらしい報告だと思います。ちなみにマルタの基幹病院はSt. Luke HospitalからMater Dei Hospitalに変わったらしく、Dr. Borgも病院を移られたようです。

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