消化管手術における術後感染の独立リスク因子としてのストレス性高血糖:発生率および炎症による媒介に関する前向きコホート研究

2026.08.28
☆

Stress-induced hyperglycemia as an independent risk factor for postoperative infections in gastrointestinal surgery: a prospective cohort study on incidence and inflammatory mediation

D. Wang*, K. Zhou , Q. Qiu , J. Liu , Q. Deng
*The Affiliated Hospital of Xuzhou Medical University, China

Journal of Hospital Infection (2026) 174, 11-17

目的

前向きコホート研究によって、消化管手術におけるストレス性高血糖(SHG)と術後感染の関連を検討した。

方法

本前向きコホート研究には、待機的消化管手術を受けた患者 765 例を登録した。連続血糖測定値を含む周術期データを収集した。術後感染は、疾病管理予防センター(CDC)の基準を用いて定義し、術後 3 日目の C 反応性蛋白(CRP)値が 190 mg/L 以上であることを追加した。単変量および多変量ロジスティック回帰分析を行い、独立リスク因子を同定した。ピーク血糖値に基づくサブグループ解析およびピーク血糖と CRP の相関解析を実施した。

結果

術後感染の発生率は 19.5%(149/765 例)であった。単変量分析により、感染リスクに関連する 12 個の変数が特定された。多変数回帰により、SHG(オッズ比[OR]1.807、95%信頼区間[CI]1.183 ~ 2.762、P = 0.006)、喫煙(OR 2.700、95%CI 1.481 ~ 4.924、P = 0.001)および開腹術式(OR 8.660、95%CI 4.171 ~ 17.976、P < 0.001)が独立リスク因子であることが確認された。用量依存的な関連が認められ、ピーク血糖が 10.0 mmol/L 以上の患者と比較して、7.0 ~ 10.0 mmol/L の患者および 7.0 mmol/L 未満の患者は感染リスクが有意に低かった(それぞれ調整オッズ比[aOR]0.29、95%CI 0.153 ~ 0.543、P < 0.001および aOR 0.04、95%CI 0.021 ~ 0.083、P < 0.001)。SHG を有する患者では、ピーク血糖値と CRP の間に正の相関が認められた(r = 0.508、P < 0.01)。

結論

ストレス性高血糖は、消化管手術における術後感染の独立した修正可能なリスク因子であり、明確な用量反応効果を示す。この関連の一部は、全身性の炎症によって媒介されていると考えられる。これらの結果は、周術期の厳格な血糖管理を感染予防戦略に組み込むことが極めて重要であることを強調している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント:
糖尿病のない待機的消化管手術患者 765 例を前向きに追跡し、周術期のストレス高血糖が術後感染と独立して関連し、血糖が高いほど感染リスクも高い傾向を示した研究である。感染対策というと手術部位の消毒、抗菌薬予防投与、手指衛生などに目が向きやすいが、周術期血糖も感染リスクを左右する患者管理の一部として捉える必要がある。ERAS や SSI 予防バンドルの中で、糖尿病患者だけでなく非糖尿病患者の高血糖にも注意する視点は実践的である。ただし単施設の観察研究で HbA1c が測定されておらず、未診断糖尿病を完全には除外できない。さらに感染の定義に術後3 日目 CRP 高値を含めているため、高血糖と炎症の関連が結果を強く見せた可能性にも注意したい。現時点では厳格な血糖目標を直ちに導入するより、高血糖を見逃さず評価・対応する仕組みを整えることが重要である。

同カテゴリの記事

2019.12.24
☆

Reducing Implant Infection in Orthopaedics (RIIiO): Results of a pilot study comparing the influence of forced air and resistive fabric warming technologies on postoperative infections following orthopaedic implant surgery

2017.01.31
☆

Bacillus species pseudo-outbreak: construction works and collateral damage

2012.11.30
☆

Postprocedural discitis of the vertebral spine: challenges in diagnosis, treatment and prevention