鼠径部血管手術後の切開創における陰圧閉鎖療法は SSI および死亡の減少に関連する:システマティックレビューおよびメタアナリシス

2026.07.18

Incisional negative pressure wound therapy after inguinal vascular surgery is associated with reduction in SSI and mortality: systematic review and meta-analysis

I. Moqbel*, Y.Z. Farhat, A.R. Al-Ihribat, A. Oun, M.F. Srour, Y.A. Mahmoud, M. D’Oria
*Cairo University, Egypt

Journal of Hospital Infection (2026) 173, 307-331

背景

手術部位感染症(SSI)は鼠径部血管手術後によくみられ、患者の最大 44%に発症し、合併症、死亡および費用を大幅に増加させる。周術期の抗菌薬によって SSI は減少するが、補助的手段のベネフィットは依然として不明である。切開創における陰圧閉鎖療法(NPWT)は、SSI のリスクを低下させると提唱されているが、特に重症感染症に対するその有効性は、まだ明らかになっていない。

方法

PubMed、Scopus、Web of Science および Embase を検索し、2005 年から 2025 年までに公表された、鼠径部血管手術における NPWT と標準的創傷処置を比較したランダム化およびコホート研究を特定した。主要転帰は、米国疾病管理予防センター(CDC)の基準または Szilagyi 分類により定義した SSI であった。副次転帰は、合併症、死亡、再手術、再入院、手術時間、入院などであった。バイアスリスクは ROBINS-I および Risk of Bias 2 ツールを用いて評価した。変量効果モデルを用いて統合推定値を算出し、χ2 および I2統計量によって不均一性を評価した。

結果

フルテキスト論文 21 件と学会抄録 1 件(患者合計 4,125 例)を本レビューの対象とした。NPWT によって、全 SSI(リスク比[RR]0.52、95%信頼区間[CI]0.42 ~ 0.64、P < 0.001)、全合併症(RR 0.68、95%CI 0.57 ~ 0.81、P < 0.001)、死亡(RR 0.48、95%CI 0.30 ~ 0.77、P = 0.002)および漿液腫/リンパ管合併症(オッズ比 0.58、95%CI 0.38 ~ 0.91、P = 0.02)が有意に減少し、不均一性は低~中等度であった。NPWT のベネフィットは、両側切開において最も大きかった。血腫、手術創離開、切断、手術時間、入院期間、再手術または再入院には有意差は認められなかった。

結論

NPWT は、鼠径部血管手術後の表層および全 SSI、合併症、死亡を、特に両側手術において有意に減少させる。深部感染症の予防に関するエビデンスは限られており、患者選択と実施を最適化するためには、質の高いさらなるランダム化試験が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

鼠径部血管手術後の閉鎖創に対する予防的陰圧閉鎖療法(NPWT)を 22 研究・4,125 例で検討したメタ解析で、標準的な創管理と比べ、SSI 全体は約半分に減少し、特に両側鼠径切開で効果が大きかった。感染管理の視点では、SSI リスクの高い手術創に対して、周術期抗菌薬などの基本的な予防策に加え、NPWT を追加策として検討する根拠になる。一方、深部・臓器体腔 SSI を確実に減らすかはまだ明らかでなく、死亡率低下も少数の研究、とくに 1 研究の影響が大きいため慎重な解釈が必要である。創離開、血腫、在院日数、再入院などには明確な差がなかった。RCT と観察研究が混在し、SSIの 定義や観察期間にもばらつきがある。現時点では全例に一律導入するというより、両側切開や創感染リスクの高い患者を中心に、費用も含めて自施設で適応を検討するのが現実的である。

同カテゴリの記事

2008.09.30

Investigation and control of a cluster of penicillin non-susceptible Streptococcus pneumoniae infections in a care home

2019.08.30

Prevalence of healthcare-associated infections and antimicrobial resistance in acute care hospitals in Kyiv, Ukraine

2021.10.31
Influence of surgical team activity on airborne bacterial distribution in the operating room with a mixing ventilation system: a case study at St. Olavs Hospital

M.K. Annaqeeb*, Y. Zhang, J.W. Dziedzic, K. Xue, C. Pedersen, L.I. Stenstad, V. Novakovic, G. Cao
*Norwegian University of Science and Technology, Norway

Journal of Hospital Infection (2021) 116, 91-98