ゲノムを重視したアウトブレイク管理から、新生児病棟における Serratia sarumanii および Serratia bockelmannii の同時伝播の初の検出が明らかに★★
Genome-oriented outbreak management reveals the first detection of concurrent transmissions of Serratia sarumanii and Serratia bockelmannii in a neonatal department A. Rath*, L.J. Klages, B. Kieninger, A. Eichner, A. Keller-Wackerbauer, S.M. Wellmann, A. Ambrosch, J. Fritsch, M. Kabesch, C. Rückert-Reed, T. Busche, J. Kalinowski, W. Schneider-Brachert *University Hospital Regensburg, Germany Journal of Hospital Infection (2026) 170, 60-68
背景
非色素産生性であるセラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)は、時に赤色を帯びていることもあり、新生児集中治療室(NICU)で頻繁にアウトブレイクを引き起こす細菌としても知られているが、最近 S. sarumanii と S. Bockelmannii という新しい種に再分類された。これにより、両者の臨床的な重要性に相違点があるのではないかという問題が提起された。本研究では、新生児病棟においてこれら新しい種の同時伝播が初めて検出されたことを報告する。
方法
2023 年 3 月から 10 月にかけて、非色素産生性である S. marcescens(質量分析法による)が新生児病棟の患児 40 例において繰り返し認められた。先を見越した全ゲノムショートリードシークエンシング(N = 42、環境分離株 2 株を含む)、ならびに 3 つの大きなクラスターに対してさらに全ゲノムロングリードシークエンシング(ナノポアシーケンシング、N = 23)を実施した後、追加のコアゲノム複数部位塩基配列タイピング(cgMLST、SeqSphere+ ソフトウェア)、Type Strain Genome Server(TYGS)による分類学的解析および Abricate による病原性因子/耐性予測を実施した。
結果
全ゲノムシークエンシングにより、14 の遺伝子型からなる多クローン性のセラチア属菌集団が明らかになり、これには 3 つの大きなクラスター(それぞれ N = 6、8、および 9)ならびに 2 組の分離株から成るペアが 2 つおよび分離株 3 株からなる小さなクラスターが含まれた。最初の MALDI-ToF による S. marcescens への分類とは対照的に、全ゲノムシークエンシングに基づく分類学的解析により、S. bockelmannii としての最大のクラスター(環境分離株 1 株を含む)内での再分類がなされた一方、残りの 2 つの大きなクラスターは S. sarumanii に分類された。
結論
全ゲノムシークエンシングベースの解析から、従来の質量分析法により、新たに分類された非色素産生性であるセラチア属菌である S. sarumanii と S. Bockelmannii が関与する長期のアウトブレイクが明らかにされた。このことは、ルーチンに全ゲノムシークエンシングを実施して伝播を正確に追跡すること、および効果的な感染制御策を実施することの重要性を浮き彫りにしている。
監訳者コメント:
世界初の S. sarumanii と S. bockelmannii の同時アウトブレイクの論文である。また、S. sarumanii 株においてメチル化パターンが検出されたことも新たな発見であり、病原性や感染制御との関連が示唆された。全ゲノム解析の導入により、従来の診断法では「S. marcescensによる長期単一アウトブレイク」とみなされていた事例が、実際には複数菌種・複数感染源による複合アウトブレイクであったことが解明された。このことはアウトブレイク時の全ゲノム解析の実施が、アウトブレイクの実態を知り、感染対策を検討する上でも極めて重要であることを示している。しかしながら、これらのゲノム解析を日常的に実施するには人材と機器等のインフラの整備が必須である。また、質量分析法による菌種同定の限界も同時に示された。
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