ルーチンに収集したデータを用いた抗菌薬耐性クラスター検出の展望および危険:異なるデータ背景を代表するタイの 3 次病院からの記述★

2026.04.14

Prospects and perils of antimicrobial resistance cluster detection using routinely collected data: an illustration from tertiary hospitals in Thailand representing different data contexts

C. Rangsiwutisak*, P. Klaytong, P. Wannapinij, P. Aramrueang, C. Boonlao, S. Khusuwan, K. Srisawai, S. Kitsaran, P. Karnjanawat, P. Turner, J. Stelling, D. Limmathurotsakul, C. Lim
*Mahidol University, Thailand

Journal of Hospital Infection (2026) 170, 48-59

背景

資源が限られた病院においてクラスターシグナルを検出および解釈するための資源は乏しい。本研究の目的は、SaTScan アルゴリズムを用いて検出された病原体の空間的時間的クラスタリングの解釈を改善することであった。同アルゴリズムは、時空間スキャン統計量を用いて、予想以上に高頻度に生じるクラスターシグナルを検出する方法である。

方法

2022 年 1 月から 12 月の期間について、タイの3 次病院 2 施設において 7 種類の抗菌薬耐性病原体に対して臨床試料培養陽性を認める入院患者の電子データの解析を実施した。SaTScan に空間・時間スキャン統計手法を適用した。4 回の解析を実施した。解析 1 には抗菌薬感受性検査結果のプロファイルは含めなかった。解析 2、3、および 4 には、解析対象患者において利用可能な結果のそれぞれ 70%以上、80%以上、および 90%以上を占めた抗菌薬の抗菌薬感受性検査結果を含めた。

結果

微生物学的データは、2022 年に1,188 床の病院から記録 125,848 件、773 床の病院から記録 54,069 件が得られた。両病院で複数のクラスターシグナルが検出され、これらには異なる期間における異なる病棟でのカルバペネム耐性グラム陰性菌が含まれた。クラスターシグナルの検出数は、解析対象とする抗菌薬を選択するために用いた閾値が上がるほど減少した。例えば、1,188 床の病院において解析 2 ではクラスター 33 個が検出されたが、解析 4 ではクラスター 4 個に減少した。同様のパターンは、773 床の病院でも観察された。検出されたクラスターシグナルの時間的な発生状況は、解析 2 および 3 において抗菌薬感受性検査結果が利用できなかった期間と一致した。

結論

本研究の結果から、SaTScanは、資源の乏しい環境において存在し得るクラスターシグナルの検出に適用できること、ならびに検出されたシグナルの解釈を、利用できる抗菌薬感受性検査データにおける時間的変化を可視化することによって支援できることが示唆される。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

世界保健機関は低あるいは中程度収入国での細菌培養データを収集・整理・標準化することで耐性菌のデータベースを構築するソフトが WHOnet であり、これらの蓄積されたデータから「偶然では説明できない集積」を数学的に見つけ出し、「統計的異常検出」をするエンジンが SaTScan である。AST 結果の時系列的な利用可能性の変化とクラスター検出結果を同時に可視化する新たなグラフィカルツールを提案した。このツールは、感染対策チームがクラスターシグナルを正確に解釈する上で有用とされる。結論として、SaTScan は資源制限環境でも適用可能であるが、断片的な AST データの影響を考慮した慎重な解釈が不可欠であることも示された。

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