クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症における重症度分類の改善に向けて:サーベイランスと臨床実践のギャップを埋める★

2026.03.07

Towards better severity stratification in Clostridioides difficile infection: bridging the gap between surveillance and clinical practice

N. Reidy*, J.H. Casey, M. Skally, C. O’Connor, K. Burns, F. Fitzpatrick
*Beaumont Hospital, Ireland

Journal of Hospital Infection (2026) 169, 68-73

目的

重症クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)(sCDI)の正確かつ一貫した記録は、リスク層別化、適時管理、ならびに最適な資源配分のために不可欠である。本研究は、国内サーベイランス基準および 欧州臨床微生物感染症学会(ESCMID)の治療に基づく sCDI 定義の適用について評価・比較し、重症度分類および症例の同定を改善するための機会を明らかにすることを目的とした。

方法

アイルランドの 三次医療機関において、2023 年 1 月 6 日から 2024 年 1 月 6 日にかけての全 CDI エピソードを対象に後向きレビューを実施した。収集するデータには、患者の人口統計学データ、最近の抗菌薬曝露、リボタイプおよび配列タイプ(ST)、放射線学的所見および臨床転帰を含めた。エピソードは、アイルランド国内サーベイランスの sCDI 定義、ならびに ESCMID の治療ベースの sCDI および重症複雑性 C. difficile 感染症(sc-CDI)の基準の両方を用いて sCDI に分類した。

結果

患者 131 例の CDI エピソード 140 件中、100 件(71%)が医療関連であり、122 件(93%)には最近の抗菌薬曝露があった。エピソード 2 件(1.4%)のみが国内 sCDI サーベイランス基準を満たした一方、63 件(45%)が ESCMID sCDI 基準を、19 件(13.5%)が ESCMID sc-CDI 基準を満たした。ESCMID 基準に基づく sCDI 症例中、39 件(62%)は 1 つの基準のみを満たしており、このことから重症度の過大評価の可能性が示唆される。重症例では、配列タイプ ST11 および ST10 の頻度が高かった。

結論

sCDI の重症度について、現在のサーベイランス定義は過小評価をしている可能性がある一方、治療ベースの基準は過大評価をしている可能性がある。重症度分類を強化し、症例発見を改善し、医療資源の適切な配分の指針とするためには、臨床的にバランスのとれた改訂版 sCDI 症例定義が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

Clostridioides difficile 感染症(CDI)は、重症度によって対応が大きく異なる。しかし実際には、「サーベイランス用の定義(報告・統計目的)」は基準が厳しく重症と判定されにくい一方で、「臨床用の定義(治療判断目的)」は基準が比較的緩やかで重症と判断されやすく、両者の間に大きな乖離が生じていることが問題である。
本研究は、サーベイランスは「報告」、臨床は「治療」と目的が異なるにもかかわらず、同じ「重症」という用語が用いられていることが現場の混乱を招いている点に着目している。そして、臨床とサーベイランスの双方に適用可能な、バランスの取れた現実的な重症度定義の必要性を指摘している。

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