カルバペネマーゼ産生グラム陰性菌に対する義務的サーベイランスは有用か?:イングランドにおけるサーベイランスの評価(2020 年から 2023 年)★

2026.03.06

Is mandatory surveillance of carbapenemase-producing Gram-negative organisms working? A surveillance evaluation, England, 2020—2023

L. Findlater*, E.L. Mason, J. McCormick, C.S. Brown, K.L. Hopkins, J. Islam, V.J. Hall, K.L. Henderson
*UK Health Security Agency, UK

Journal of Hospital Infection (2026) 169, 98-106

背景

カルバペネマーゼ産生菌(CPO)は、増大しつつある公衆衛生上の脅威である。2020 年 10 月、イングランドの検査機関は、ヒト臨床サンプルおよびスクリーニングサンプルで、グラム陰性菌における獲得された CPO の検出を、既存の国内検査報告システムに報告することが義務付けられた。

目的

本研究の目的は、獲得された CPO の疫学を記述し、義務的サーベイランスシステムの検査機関の網羅性、データ品質、適時性、簡便性、および受容性を評価することであった。

方法

混合法アプローチを用いて、2020 年 10 月 1 日から 2023 年 12 月 31 日の間に検査機関で確認された CPO の報告を抽出して、検査機関の網羅性(2023 年に第二世代サーベイランスシステムに対して、CPO の報告を 1 回以上行った検査機関の割合)およびデータ品質(変数の完全性)を評価した。関係者との半構造化インタビューを実施して、テーマ分析により簡便性、受容性、および認識されている適時性について評価した。

結果

イングランドにおいて獲得された CPO エピソードの報告は、2,670 件(2021 年)から 5,759 件(2023 年)へと倍増し、報告率には地域によってばらつきがあった(ロンドンの 100,000 人あたり 21.3 対 南西部の 100,000 人あたり 1.8)。2023 年に、検査機関の報告率は 72%(115 施設中 83 施設)であり、地域によって 38%から 100%の範囲であった。データ品質は高かった。面接参加者(N = 12)は、技術的な問題、スタッフの能力の限界、または人的エラーによる検査結果報告の遅延を回答したが、長期の傾向をモニタリングするためのサーベイランス結果の適時性には満足していた。義務的報告の実施は受容可能であり、一部の参加者は最新式の自動化報告を経験していたが、他の参加者は既存のシステムを用いる場合に複雑であるが手作業による回避策を講じていた。

結論

CPO の報告件数は増加しており、CPO のサーベイランスは効率的、有効かつ受容可能であると認識されている。しかし、義務的となってはいるが、検査機関の報告はいまだ包括的なものではない。われわれは、すべての検査機関が報告する能力をもつようになり、報告過程が最適化されるために、既存のサーベイランスシステムの改善に投資することを推奨する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

この論文は、イングランドにおける「CPO の義務的サーベイランスが機能しているか」を検証した、政策評価に近い研究である。義務化により CPO の報告数は倍増した一方で、地域差の大きさや報告率の不完全さが指摘されている。しかし、サーベイランスシステム自体の評価は高く、その方向性は妥当であることが示唆される。
本論文の重要なポイントは、義務化のみでは十分ではなく、実際に報告を可能とする体制や環境の整備が不可欠であると指摘している点にある。

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