バイオフィルム除菌を謳う 3 つの方法の比較★

2026.02.23

Comparison of three methods for claiming biofilm disinfection

I. Beaugelin*, S. Bulot, L. Pineau
*Eurofins Biotech Germande, France

Journal of Hospital Infection (2026) 168, 80-87

緒論

バイオフィルムは院内感染としばしば関連している。患者のリスクを低減するためには、消毒薬はバイオフィルム内の細菌を不活化できなければならない。文献中では多くの方法が記述されているが、これまでバイオフィルムに対する除菌効果についてのコンセンサスは得られていない。

方法

発表されている 3 つの緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)バイオフィルム増殖方法を、蛋白質、全有機体炭素および細菌濃度の測定により特徴付けた。次いで、消毒薬に対する各バイオフィルムの感受性を、NF EN 14561 に基づく試験方法に従い、過酢酸(PAA)溶液を基準対照として評価した。

結果

ISO 15883-5 に従って形成されたバイオフィルムには、ASTM E2562 または Konrat らの方法を用いて形成されたバイオフィルムと比較して、蛋白質および細菌の含量が大きいことが示された。この結果から、ISO 15883-5 によるバイオフィルムは他の 2 つの方法によるバイオフィルムと比較して消毒薬に対する感受性が低かったこと、ならびに古いバイオフィルムほど消毒薬に対する感受性がより低いことが示される。

結論

本研究では、バイオフィルムの増殖期間と成熟性との間に直接の相関があることが認められた。ISO 15883-5 による 96 時間にわたるバイオフィルム形成では、ASTM E2652(48 時間)および Konrat らの方法(24 時間)によるバイオフィルム形成と比較して蛋白質、全有機体炭素および細菌の濃度が高いことが認められた。バイオフィルム成熟段階の重要性が、消毒効果試験により確認された。これらの試験結果から、成熟段階の最も長いバイオフィルムは消毒薬に対する感受性がより低いことが示されている。消毒薬が医用機器に対して、また医療施設において使用できることを実証するために実施する型式試験(Type tests)には、成熟バイオフィルムに対する試験を含めるべきである。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

バイオフィルム関連感染は、特に内視鏡、洗浄消毒装置、再使用医療機器と深く関係しており、浮遊菌に対する消毒効果のみでは不十分であることは周知の事実である。しかし実際には、「どの方法で作製したバイオフィルムを用いて評価するか」について統一されていないことが大きな問題であった。
本研究は 3 つの手法を比較し、「成熟度が結果を左右する」ことを明確に示した点が最大の特徴である。より長時間培養されたバイオフィルムでは、蛋白質、全有機体炭素、および細菌濃度が高く、成熟したバイオフィルムほど消毒薬に対する感受性が低いという結果は、現場感覚とも一致している。すなわち、短時間培養モデルで「除菌できる」と示されても、実臨床における成熟バイオフィルムには通用しない可能性があることを示唆している。
なお、本研究は Pseudomonas aeruginosa(緑膿菌)のみを対象として評価しているため、グラム陽性菌、真菌、あるいは混合バイオフィルムへの一般化には慎重な解釈が必要である。

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