糞便細菌叢移植の糞便ドナー候補として医療従事者を評価すること:抗菌薬耐性腸内細菌および腸管病原性微生物についての横断的研究

2025.11.24

Assessing healthcare workers as potential stool donors for faecal microbiota transplantation: a cross-sectional study of antimicrobial-resistant gut bacteria and enteropathogenic micro-organisms

M. Bonilla-Moreno*, C. Medina-Gómez a , D. Guevara-Núñez, L. Saiz-Escobedo, S. Martí, M.Á. Domínguez, A. Carrera-Salinas, G. Rodríguez-Sevilla
*Hospital Universitari de Bellvitge, Spain

Journal of Hospital Infection (2025) 165, 153-162

背景

糞便細菌叢移植(FMT)は、腸内細菌を調節するために設計された処置であるが、信頼できる便ドナーを特定することは依然として課題である。

目的

この研究は、Bellvitge 大学病院で、医療従事者における腸管病原微生物と薬剤耐性(AMR)腸内細菌の保有率を評価し、便ドナーとしての可能性を検討することを目的とした。

方法

2022 年 11 月から2023 年 4 月まで期間に、106 名の医療従事者を登録された。便検体をリアルタイム PCR と従来の方法を使いて各種腸管病原微生物について検査し、AMR 腸内細菌を選択培地を用いてスクリーニングした。16SrRNA シークエンシングを実施し、シャノン指数を用いて多様性を評価した。

結果

腸管病原微生物は、検体の 48.1%(51/106)で検出され、最も多かったのは原虫(37.7%、40/106)で、続いて細菌(10.4%、11/106)、ウイルス(4.7%、5/106)であった。Blastocystis hominis(33%、35/106)とDientamoeba fragilis(18.8%、20/106)が最も多い原虫であり病原性大腸菌(Escherichia coli)が最も多い病原細菌菌であった(3.8%、4/106)。基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生大腸菌は2.8%の検体(3/106)で検出された。カルバペネマーゼ産生菌、バンコマイシン耐性腸球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficileはいずれの検体からも検出されなかった。B. hominis を保有する医療従事者は、非保有者と比較して有意に高いシャノンα多様性を示した(P < 0.01)。

結論

医療従事者における腸管病原微生物とAMR腸内細菌の保有率は、健康基準とスクリーニング基準を満たすことを条件として、医療従事者を FMT の潜在的な便ドナーとして含めることを支持するものであるこのアプローチは、FMT プログラムにおける適切な便ドナー不足の解決に役立つ可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

日本では再発性 Clostridioides difficile 感染症(CDI)に対する FMT が一部の施設で臨床研究されているが、安全なドナー確保が課題である。本研究は医療従事者が FMT ドナー候補として有望であることを示唆しているが、日本では欧米と比較して薬剤耐性菌の保菌率が異なる可能性があるので今後日本で FMT が前向きに検討される場合には日本独自のスクリーニング基準の確立とともにドナーとして医療従事者を組み入れる場合には倫理的・法的枠組みの整備が必要となると思われる。

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