フーリエ変換赤外(FT-IR)分光法を用いた VIM-1 産生クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)に起因する院内アウトブレイクの特性評価
Characterization of a nosocomial outbreak caused by VIM-1 Klebsiella michiganensis using Fourier transform infrared (FT-IR) spectroscopy D. Rodriguez-Temporal*, M. Sánchez-Cueto, S. Buenestado-Serrano, M. Blázquez-Sánchez, E. Cercenado, M. Gutiérrez-Pareja, A. Molero-Salinas, E. López-Camacho, P. Muñoz, D. García de Viedma, L. Pérez-Lago, B. Rodríguez-Sánchez *Hospital General Universitario Gregorio Marañón, Spain Journal of Hospital Infection (2025) 162, 9-16
背景
フーリエ変換赤外(FT-IR)分光法は、迅速で信頼度の高い細菌タイピングの方法として浮上している。本研究では、VIM-1 産生クレブシエラ・ミシガネンシス(Klebsiella michiganensis)(K. oxytoca 複合体)に起因する院内アウトブレイクの特性評価において FT-IR 分光法を評価した。
方法
スペインの Hospital Universitario Gregorio Marañón から、アウトブレイク期間に採取されたすべての K. oxytoca 複合体分離株(27 株)および対照分離株(8 株)を入手した。分離株27 株のうち22 株は小児患者から、4 株は成人から得られたもので、1 株は環境分離株であった。FT-IR 分光法を細菌タイピングに用い、比較のために基準タイピング法として全ゲノムシークエンシング(WGS)を用いた。
結果
FT-IR スペクトルの分析により明確なクラスターが明らかになり、そのうちの 1 つがアウトブレイク分離株 19 株(小児患者由来 18 株、環境分離株)に対応したことから、共通の起源が示唆された。その他の小規模クラスターでは、分離株間の疫学的関連は認められなかった。後の WGS 解析により、K. michiganensis がアウトブレイクの原因病原体として同定された。FT-IR は、アウトブレイク分類において WGS との高い一致度を示し、この環境における信頼性が裏付けられた(調整ランド指数 0.882、調整ウォレス係数0.937)。さらに、FT-IR スペクトル可視化によって、アウトブレイク分離株と非アウトブレイク分離株を識別する特徴が明らかになり、アウトブレイクが疑われる場合の迅速なスクリーニングが可能になった。
結論
FT-IR 分光法は、適時の介入と効果的な院内アウトブレイクの管理を可能にする、迅速で費用対効果の高い方法である。WGS との統合により、アウトブレイク調査の正確度が高まることから、臨床微生物学や感染制御実践における有用性が示されている。
監訳者コメント:
FT-IR は赤外光により細菌の「分子指紋」を測定する迅速・低コストのタイピング法である。本研究の院内アウトブレイク解析では、その判定が全ゲノム解析(WGS)と高い一致を示した。まず FT-IR で疑わしいクラスターを抽出し、次いで WGS で菌種の確定と遺伝学的関連を精査する二段階アプローチは、院内感染対策において現実的かつ強力な戦略である。今後の普及と活用が期待される。
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