ルーチンサーベイランスのデータにおけるバンコマイシン耐性腸球菌による病院アウトブレイクの自動検出のためのポアソン隠れマルコフモデルの使用
The use of a Poisson hidden Markov model for automated detection of hospital outbreaks with vancomycin-resistant enterococci in routine surveillance data S.A.M. van Kessel*, C.C.H. Wielders, J. van de Kassteele, A. Verbon, A.F. Schoffelen, on behalf of the ISIS-AR study group on behalf of the SO-ZI/AMR study group *National Institute for Public Health and the Environment (RIVM), the Netherlands Journal of Hospital Infection (2025) 162, 62-67
背景
オランダにおいてバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)による感染症の有病率は低いにもかかわらず、VRE は頻繁に病院アウトブレイクの原因微生物となっている。本研究では、ポアソン隠れマルコフモデル(PHMM)により、オランダのInfectious Diseases Surveillance Information System for Antimicrobial Resistance(抗菌薬耐性に関する感染症サーベイランス情報システム;ISIS-AR)のルーチンデータにおいて、VRE の院内アウトブレイクを検出できるか否かを検討した。
方法
2013 年から 2023 年にかけて後向きデータ連携研究を実施し、ISIS-AR からの VRE 分離株数に関する病院 89 施設からのデータを対象とした。PHMM を用いて、病院レベルでの毎週の VRE 分離株数に基づいて、潜在的なアウトブレイクの検出を試みた。第 t 週当たり、同モデルは観察された分離株数がアウトブレイクから発生した確率 P を割り当てる。少なくとも連続した 2 週について、P(t) > 0.5、P(t) > 0.7、および P(t) > 0.9 という閾値を用いた。PHMM の結果を、医療施設における高度耐性微生物アウトブレイクに関する早期警告および対応会議;SO-ZI/AMR に対して自発的に報告されたアウトブレイクと比較した。検出割合(%)を算出し、報告されたが検出されなかったアウトブレイクの VRE 分離株数、ならびに検出されたが報告されなかったアウトブレイクの VRE 分離株数を記述した。
結果
報告されたアウトブレイク 85 件のうち、PHMM により、閾値を P(t) > 0.5、P(t) > 0.7、およびP(t) > 0.9 とした場合に、それぞれ 87%、86%および 81%が検出された。検出されなかったアウトブレイクは、大部分が小規模のアウトブレイクであった。PHMM により、報告されておらず潜在的なアウトブレイクが、それぞれ 66 件、55 件および 44 件検出され、それぞれ 44%、35%および 30%には VRE 陽性患者 1 例か 2 例のみが含まれた。
結論
全体的に、PHMM にはルーチンサーベイランスのデータにおいてVRE の院内アウトブレイクを検出できる可能性が示され、検出率は高かった。臨床実践のためのさらなる最適化を行うには、前向き研究が必要である。
監訳者コメント:
ビッグデータ時代では、膨大な電子カルテデータから人手を介さずにアウトブレイクの予兆を検出する本研究のような取り組みの進展が期待される。とくにリアルタイムの監視や自動アラートの実装などが鍵となっていくであろう。
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