中心静脈ライン関連血流感染症に対する組織接着剤塗布の効果:多施設共同後向き研究★★
Effect of tissue adhesive application on central line associated bloodstream infections: a multi-centre retrospective study Y. Kwon*, D.J. Shim, J.H. Lee, D. Kim, S.H. Baek, J. Kim, E.J. Kim, Y.J. Kim, T.W. Choi, J.H. Won * Seoul 88 Clinic, Republic of Korea Journal of Hospital Infection (2025) 162, 153-159
背景
中心静脈ラインへのアクセスデバイスの使用は、中心ライン関連血流感染症(CLABSI)、不注意により先端の位置が変わること、出口の出血、局所の感染等、様々な有害事象に悩まされてきた。
目的
中心/大腿から挿入した中心カテーテルの出口部位に組織接着剤(2-オクチルシアノアクリレートと n-ブチルシアノアクリレートの混合)を塗布することが、CLABSI の発生を減少させることができたかを調べること。
方法
歴史的対照群を用いたこの後向きレビューは、3 次医療施設3施設で実施した。中心/大腿から挿入した中心カテーテルの出口部位への組織接着剤の塗布を 2021 年 12 月から 2022 年 7 月に、同時に開始した組織接着剤群を設定した。対照群の患者は、組織接着剤の塗布の前の 2021 年 2 月から2021 年 11 月に、中心カテーテルを中心/大腿から挿入されていた。CLABSI、毛細血管性出血、位置が変わること、皮膚の問題等の有害事象の発生率を、群間で比較した。逆確率重み付けで調整した Cox 分析を使って、リスク因子を解析した。
結果
組織接着剤群は、1,061例の患者から成り、対照群には 1,049例の患者が組み入れられた。CLABSI の発生率は、組織接着剤群(1,000 カテーテル日当たり 1.84件)が対照群(1,000 カテーテル日当たり 3.66件)と比べて有意に低く、率比は 0.5(95%信頼区間、0.28 ~ 0.87、P = 0.01)であった。毛細血管性出血率は有意に低かった(組織接着剤、120件、対照、158件、P = 0.01)。逆確率重み付けで調整した分析では、組織接着剤がリスク減少因子であること(P = 0.003)が明らかになった一方で、年齢(P = 0.04)とトリプルルーメンであること(P = 0.04)が CLABSI の有意なリスク因子であった。
結論
中心静脈/大腿静脈から挿入した中心静脈カテーテルの出口部位に組織接着剤を塗布することで、CLABSI の発生率を有意に低下させることができた。重篤な有害事象はなかった。
監訳者コメント:
2-オクチルシアノアクリレートと n-ブチルシアノアクリレートは、医療用接着剤として使用されるシアノアクリレート系化合物で、すでに創傷閉鎖や医療機器の固定に利用されている。この接着剤は米国ですでに「SecurePortIVⓇ」カテーテル固定用接着剤として FDA で認可されている。韓国での後方視的研究において、カテーテル刺入部の固定に使用した結果、CLABSI の発生率が減少し,刺入部からの出血も少なく、結果的にドレッシングの交換頻度も軽減できている。カテーテルの固定と刺入部位の保護のためにこれらの医療用接着剤のさらなる開発を期待する。
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