様々な(圧縮空気の)圧力が軟性内視鏡の乾燥時間に与える影響★★
Impact of different pressures on the drying time of flexible endoscopes W.Q. Hu*, J.Y. Li, C.Y. Zhou, Y.X. Ge, Q. Gu *First Affiliated Hospital of Zhejiang University School of Medicine, China Journal of Hospital Infection (2025) 161, 37-43
背景
内視鏡は、構造が複雑であるので、乾燥条件が均一ではない。しかし、現時点では、臨床における乾燥のやり方について、明確な指針はなく、内視鏡によっては、乾燥が不十分になることもあり、それは、感染のリスクを増加させる。圧縮空気の圧力は、内視鏡の乾燥の効果に影響を及ぼすことが示されているが、具体的な必要条件は分かっていない。
目的
様々な内視鏡を十分に乾燥させるのに必要な時間を、様々な圧力の条件で、測定すること。
方法
よく使われている Olympus 社製軟性内視鏡の 6 つの型を選択し、それぞれの型について、0.102および 0.204 MPa の圧力下において多数の乾燥時間群を設定した。各群で、10 個の内視鏡を観察した。
結果
乾燥時間は、型や圧力によって異なった。0.102 MPa で、処置具チャンネルの乾燥は、80 s から 160 s(平均、123 s)の範囲である一方、吸引チャンネルは、260 s から 540 s(平均、428 s)の範囲であった。0.204 MPa では、処置具チャンネルは、50 s ~ 90 s(平均、72 s)で乾燥し、吸引チャンネルは、130 s ~ 230 s(平均、186 s)で乾燥した。
結論
内視鏡の最適な乾燥時間は、型や圧力によって異なる。圧力を高くすると(0.204 MPa)、水分が効率良く除去され、乾燥速度が速くなる。生検チャンネルの直径が同じ内視鏡では、長い方が、長い乾燥時間を必要とする。それに加えて、処置具チャンネルは、吸引チャンネルより早く乾く。
監訳者コメント:
軟性内視鏡は洗浄消毒後に無菌状態を維持することは不可能であり、内視鏡内腔の圧縮空気による乾燥とその後の乾燥維持は必須である。保管時にも圧縮空気を送り込み乾燥させることも海外では要求されているが、日本国内ではまだ普及していない。 日本内視鏡学会の「消化器内視鏡の洗浄・消毒標準化に向けたガイドライン」(2018)(https://doi.org/10.11280/gee.60.1370)ではステートメント1-8 に「保管前のスコープは、消毒後アルコールフラッシュを行い管路内の乾燥を促し、付属品を外し清潔な乾燥した保管庫に保管することが必要である」と書かれ、さらに「送気や吸引を行って全ての管路を乾燥させる必要がある」と追記解説がされている。一方、2021 年の米国マルチソサイエティガイドラインで(https://doi.org/10.1016/j.gie.2020.09.048)は、洗浄と高レベルの消毒後は、アルコールフラッシュ後に無菌または濾過された圧縮空気での内視鏡腔内の乾燥が必要とされ、通気時間は最低でも 10 分とされており、この論文での吸引チャンネルの乾燥時間 540 秒(9 分)に近く、この研究の重要性がわかると同時に、圧縮空気の圧も内視鏡内腔の乾燥において重要であることがわかる。
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