オランダの歯科における血液曝露事例のリスク因子、および血液曝露事例の報告★★
Risk factors for blood exposure accidents and their reporting in dentistry in The Netherlands I.F. Persoon*, A.M. Kaan, N.Su, J.J. de Soet, C.M.C. Volgenant *University of Amsterdam and Vrije Universiteit Amsterdam, The Netherlands Journal of Hospital Infection (2025) 160, 26-33
背景
口腔医療関係者は、血液曝露事例の後、血液によって感染するウイルスのリスクに直面する。
目的
この研究は、オランダの口腔医療診療所における職業上の血液曝露事例を調査し、血液曝露事例のリスク因子を探り、報告されないことが起こる理由を特定することを目的とした。
方法
2 つの質問票を配布した。1 つは、前向きの質問票で、国が運営している職業上の血液曝露事例の報告センターに連絡した血液曝露事例の報告者に送られ(リキャップについてのヨーロッパの法律の前および後に配布)、もう 1 つは、後向きの質問票で、過去 4 年間血液曝露事例の報告をしていなかった診療所に送られた。データを解析し、血液曝露事例の発生および報告に関連する因子を特定するために、ロジスティック回帰を適用した。この研究は、STROBE 宣言に従って報告されている。
結果
合計で 516 の質問票が戻ってきた(37.7%)。口腔医療関係者 445 名が血液曝露事例を経験していたのに対して、69 名は経験していなかった。血液曝露事例の大部分は、麻酔の針で起こり(43.3%)、器具をきれいにしているときに起こった(51.6%)。リキャップは、禁止された後も、依然として、重要な原因であった(P = 0.076)。歯科医は、歯科医ではない関係者(口腔衛生士や歯科助手)と比べて、安全プロトコール(P < 0.001)や血液曝露事例の影響(P < 0.001)についての知識がなかった。血液曝露事例のプロトコールについて正確な知識のある口腔医療関係者は、正確な知識のない口腔医療関係者よりも、血液曝露事例を経験する可能性が高く(OR = 2.9、95%CI 1.5 ~ 5.6、P = 0.001)、血液曝露事例を報告する可能性が高かった(OR = 8.0、95%CI 3.9 ~ 16.5、P < 0.001)。歯科医が血液曝露事例を報告するオッズは、低く、歯科医ではない関係者の0.3倍であった(95%CI 0.1 ~ 0.7、P = 0.004)。
結論
ガイドラインをより効果的に実施することが、血液によって罹患する疾患の伝播を予防することや減少させることにとって、極めて重要である。針をリキャップすることが、多数の血液曝露事例を引き起こし続けているので、リキャップや、安全工学に基づく機器に対する態度や行動を変えることが必須である。
監訳者コメント:
歯科領域における針刺し事例の発生頻度に関する研究であるが、オランダでは 2012 年に針のリキャップが禁止されたものの、約 7 割でリキャップ行為は継続実施されており、安全器材の導入も 4 割程度に留まっている。もう一つの原因として「麻酔針」があるが、器具の後片付け時の発生であり、ここにもリキャップがその一因としてあげられている。したがって、口腔医療分野での針刺し事例防止には、現場の意識改革に加え、安全器材の導入と訓練による行動変容を、今以上に強化する必要がある。
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