一般病棟におけるカルバペネマーゼ産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)検出後の接触患者および病院環境のアウトブレイク調査
Outbreak investigations of contact patients and the hospital environment after detection of carbapenemase-producing Pseudomonas aeruginosa on general hospital wards A.C. Büchler*, C.H.W. Klaassen, I. de Goeij, M.C. Vos, A.F. Voor in ’t holt, J.A. Severin *Erasmus MC University Medical Center, The Netherlands Journal of Hospital Infection (2025) 159, 11-19
背景
カルバペネマーゼ産生緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)(CPPA)は、医療環境においてアウトブレイクを引き起こすことが知られている。接触患者および環境のスクリーニングなどのアウトブレイク調査は、アウトブレイクを封じ込めるための感染予防・制御(IPC)管理の鍵となる。
目的
本研究の目的は、一般病棟に入院中の患者の臨床またはスクリーニング培養で予期せず CPPA が検出された後に実施された、アウトブレイク調査の成果を検討することであった。
方法
本後向きコホート研究には、2011年 6 月から 2021年 12 月に、一般病棟での入院中に CPPA が新たに検出されたすべての成人患者(「指標患者」)を組み入れた。実施されたアウトブレイク調査、すなわち疫学的につながりがある患者(「接触患者」)および環境のスクリーニングを評価した。分離株を全ゲノムシークエンシング(WGS)によって解析した。
結果
指標患者 38 例中 34 例(89.5%)のアウトブレイク調査を評価した。接触患者のスクリーニングは 34 例(100%)、環境のスクリーニングは 18 例(52.9%)で実施されていた。環境スクリーニングでは 8 例(44.4%)において CPPA が検出され、WGS により 4 例(22.2%)において指標との関連性が確認された。特定された接触患者 1,982例のうち合計 1,707 例(86.1%)がスクリーニングを受け、そのうち 8 例(0.5%)が CPPA を有した。WGS により、そのうち 5 例(0.3%)において指標患者から接触患者への伝播が確認された。
結論
環境スクリーニングは、感染源を特定し、対象を絞った IPC 措置の適時の導入を可能にすることから、CPPA に関するアウトブレイク調査の一部にすべきである。指標患者から接触患者への伝播の特定は、本研究の環境ではまれであったことから、リスクの高い接触患者の定義を見直す必要があることが示唆された。
監訳者コメント:
本研究は、一般病棟においてカルバペネマーゼ産生緑膿菌(CPPA)が新規に検出された 34例を対象としたアウトブレイク調査を解析し、接触者スクリーニングによる二次感染確認率は 0.3%と極めて低率であった一方、環境スクリーニングでは 44%において CPPA が検出され、感染源として環境が強く示唆されたことを報告している。いわゆる人から人への伝播と判断される症例においても、実際には環境を介した間接的伝播の可能性が否定できず、「接触」の定義、すなわち誰をハイリスク接触者としてスクリーニングすべきかについて再検討の必要がある。環境調査の標準的導入に加え、排水設備の管理や個室の利用促進を含む包括的な感染対策の再構築が求められる重要な知見である。
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