医療関連感染の COVID-19 と死亡率★★

2025.04.02

Healthcare-associated COVID-19 infections and mortality

P. Langlete*, H.-M. Eriksen-Volle, T.Hessevik Paulsen, R. Raastad, M. Fagernes, H. Bøås, J. Himmels
*National Institute of Public Health, Norway

Journal of Hospital Infection (2025) 158, 61-68

背景

医療関連感染の COVID-19 の影響、およびその結果の死亡率を定量することは、医療現場で感染予防・制御(IPC)戦略を実施するための必要条件を評価するのに極めて重要である。

目的

ノルウェーの入院患者における医療関連感染の COVID-19 の発生、および関連する死亡率を調べること。

方法

レジストリに基づく後向き研究を、ノルウェーの国民医療データを使い実施した。研究には、2019 年 1 月 1 日から 2023 年 1 月 1 日までに入院した患者を組み入れ、医療関連感染の COVID-19 患者と市中感染の COVID-19 患者を比較した。全部で 54,885 例の COVID-19 が特定され、そのうち 1,188 例が、医療関連感染の COVID-19 の我々の定義を満たした。合計で 742 例の医療関連感染の COVID-19 の入院患者を、後期の段階で COVID-19 と診断された 2,583 例の入院患者と、年齢、性別、入院期間、病棟によってマッチさせた。医療関連感染の COVID-19 は、入院から少なくとも 7 日後だが退院前の時点の SARS-CoV-2 検査が陽性と記録されていることと定義した。主要転帰は、365 日死亡率とし、医療関連感染の COVID-19 であるか市中感染の COVID-19 であるかによって分類し、Cox 回帰で定量し、年齢、性別、診断について調整した。副次的転帰は、ワクチン接種状況および死因に基づく死亡率の変化等とした。

結果

死亡率は、医療関連感染の COVID-19 患者の方が、市中感染の COVID-19 患者と比べて、一貫して高く、差は、感染直後に最も大きかった。ワクチン接種は、全死因死亡と COVID-19 による死亡のリスクを有意に減少させた。

結論

医療関連感染の COVID-19 は、市中感染の COVID-19 よりも、一貫して高い死亡率を、特にオミクロンの期間にもたらした。ワクチン接種は、両方の群で、死亡率を効果的に減少させた。これらの研究結果は、医療関連感染の COVID-19 の影響を軽減することにおいて、IPC 対策とワクチン接種が重要であることをはっきりと示している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

本研究は、ノルウェーにおける全国レジストリデータを用いて、医療関連感染 COVID-19 が市中感染型に比べて高い死亡率と関連すること、特にオミクロン期においてもその傾向が持続することを明らかにした。日本の医療現場において予後不良因子には高齢入院患者や基礎疾患を有する者が多いことが明らかとなっている。院内発生での感染対策は強化されてきたものの、ワクチン接種は十分ではない。本研究が示したコロナワクチン接種が全死亡および COVID-19 関連死亡の両方を有意に低下させたことは、日本の医療現場でも感染対策の 1 つとしてのワクチンの位置づけを検討する参考となり得ると思われる。

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