イタリアの病院 1 施設における VIM 型メタロ-β-ラクタマーゼ産生腸内細菌目細菌の複数菌および複数クローンの大規模かつ長期的な拡散★
Large, protracted, multi-species and multi-clonal spread of VIM-type metallo-b-lactamase-producing Enterobacterales in an Italian hospital R. Olivieri*, E. Riccobono, S. Gonnelli, C. Basagni, M. Tumbarello, M.G. Cusi, G.M. Rossolini *Siena University Hospital, Italy Journal of Hospital Infection (2025) 157, 10-18
背景
カルバペネム耐性腸内細菌目細菌のうち、とくにカルバペネマーゼ産生腸内細菌目細菌(CPE)は、ヒトの健康に大きな脅威をもたらし、世界保健機関によって優先すべき重大な薬剤耐性病原体のリストに記載されている。
目的
Verona integron-encoded metallo-β-lactamase(VIM)型カルバペネマーゼを産生する菌種である CPE の大規模な院内拡散、ならびに拡散に対処するために導入した感染予防・制御策について報告すること。
方法
感染症を引き起こしたり、患者に定着したり、環境試料に存在したりする VIM 陽性 CPE(VIM-CPE)の検出と同定を、従来の培養法および分子解析法を用いて実施した。選択した分離株の全ゲノムシークエンシングを実施し、クローンの関連性を調査した。拡散に対処するために、基本的(積極的サーベイランス、接触予防策、濃厚接触者スクリーニング、患者隔離、表面清掃、手指衛生)、ならびに先端的(週 1 回の直腸保菌の点有病率調査、医療従事者の追加トレーニング、病棟の特別衛生管理、特別な維持介入、環境の微生物学的スクリーニング、使い捨て備品、病棟の再配置)な感染予防・制御(IPC)策を実施した。
結果
2021 年 11 月から 2023 年 12 月にかけて、1 病棟内で 151 例の患者(大半が保菌)に関与する VIM-CPE の拡散が確認された。拡散には数種の腸内細菌目細菌が含まれ、一部の症例ではクローン性増殖が認められた。基本的ならびに先端的な IPC 策の実施は、一時的に拡散を緩和することができたが、多数の再発がみられ、未確認の環境リザーバーの存在が示唆された。
結論
病院環境において VIM-CPE は、大規模かつ複雑な院内アウトブレイクを引き起こす可能性があり、IPC 実践によるアウトブレイク管理への課題が浮き彫りにされた。
監訳者コメント :
本論文は、イタリアの病院で発生した VIM 型メタロ-β-ラクタマーゼ(VIM-CPE)産生腸内細菌の長期にわたるアウトブレイクを報告している。感染制御策は一定の効果を示したものの、完全な封じ込めには至らず、病棟の排水設備を含む環境リザーバーの関与が示唆された。特に、シンク排水トラップから VIM 陽性菌が検出され、患者由来の VIM-CPE との遺伝的関連が確認されたことから、排水システムが持続的な感染源となっていた可能性が高い。
日本では VIM 型の検出は少ないものの、同じメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)に分類される IMP 型が主流であり、国内で報告されている CPE アウトブレイクの多くに関与している。過去の事例においても、環境リザーバーを介した持続的な感染拡大が指摘されており、従来の感染対策のみでは完全に封じ込めることが難しい点が共通している。
本論文は、CPE の制御において、感染対策と環境管理の統合が不可欠であることを示唆している。日本の医療機関においても、排水設備を含む環境サーベイランスの強化と、耐性遺伝子の水平伝播を防ぐための包括的な対策が求められる。
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