逆確率重み付けによって集中治療室における医療関連感染症のより正確な発生率の推定につながる:2 つの全国サーベイランスシステムによる結果★

2025.01.17

Inverse probability weighting leads to more accurate incidence estimates for healthcare-associated infections in intensive care units ‒ results from two national surveillance systems

C. Vicentini*, R. Bussolino, M. Perego, D. Silengo, F. D’Ancona, S. Finazzi, C.M. Zotti
*University of Turin, Italy

Journal of Hospital Infection (2025) 155, 73-81

背景

医療関連感染症をモニタリングするために 2 つの主要なアプローチを用いた:縦断的サーベイランス(発生率の測定が可能)および点有病率調査(PPS)。PPS はかかる時間がより少ないが、長さバイアスのあるサンプリングの影響を受けており、この影響は逆確率重み付けによって修正することができる。我々は、この方法の正確度について、イタリアの 2 つの全国サーベイランスシステムからのデータの解析により評価した。

方法

前向きサーベイランスシステム(GiViTI)によって測定された人工呼吸器関連肺炎(VAP)および中心ライン関連血流感染症(CLABSI)の発生率を、PPS によって測定され、集中治療室における同じ医療関連感染症の粗有病率および逆確率重み付け有病率の変換によって得られた推定発生率と比較した。重み付け有病率は、全患者についてそのリスク期間と反比例した重み付けを行った後に得た。有病率は、Rhame と Sudderth の式の改変版を用いて、入院 100 件あたりの発生率に変換した。

結果

全体で、GiViTI によりモニタリングされた患者 30,988 例および PPS によってモニタリングされた患者 1,435 例を組み入れた。VAP および CLABSI の粗有病率に基づき推定された発生率と、GiViTI により測定された発生率との間に有意差が認められた(それぞれ、相対リスク 2.5 および 3.36、95%信頼区間 1.42 ~ 4.39 および 1.33 ~ 8.53P = 0.006 および 0.05)。これとは逆に、VAP および CLABSI の重み付け有病率に基づき推定された発生率と、GiViTI によって測定された発生率との間には有意差は認められなかった(それぞれ、P = 0.927 および 0.503)。

結論

前向きサーベイランスが実施できない場合は、我々の単純な方法を用いて、PPS のデータからより正確な発生率を得ることができるだろう。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

医療関連感染症のサーベイランス方法としては、対象患者を前向きにデータ収集してゆく縦断的方法と、特定の一時点での全患者データを収集する横断的な点有病率調査法(PPS)がある。後者は患者の在院日数の違いによりサンプリングされる確率が異なるタイプの選択バイアスがあり、本論文ではこの欠点を補うために逆確率重み付けを実施している。PPS は継続的な監視が実施できない場合に繰り返し実施することで、感染動向や介入の効果を評価できる。一方、前者は通常、特定の感染症または臨床現場を対象に長期に連続的に経過をフォローするため、患者転帰に関する詳細情報が入手できており、より深い分析ができる。両者の利点をうまく利用して感染対策の改善につなげたいところである。

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