大腸手術における手術部位感染症予防ケアバンドル:スコーピングレビュー
Surgical site infection prevention care bundles in colorectal surgery: a scoping review T. Cunha*, S. Miguel, J. Maciel, C. Zagalo, P. Alves *Universidade Católica Portuguesa, Portugal Journal of Hospital Infection (2025) 155, 221-230
背景
ほとんどの種類の手術において、感染率を低下させるために手術部位感染症(SSI)予防バンドルが用いられている。大腸手術に合わせたバンドルが使用され、成功している。
目的
大腸手術における各 SSI 予防ケアバンドルを構成する個々の介入およびそれらの実施に伴う SSI 発生率の低下を特定し、検討した。
方法
2022年 12 月に、PubMed、CINAHL、Web of Science Core Collection および Scopusにおいてスコーピングレビューを実施した。
結果
本レビューでは、2011 年から 2022 年までの大腸手術における SSI 予防に関する研究として特定された 164 件中、48 件を解析した。研究 1 件あたり平均 11 種類の介入が認められ、主に術前期(機械的腸管前処置、経口抗菌薬による腸管除菌、除毛、クロルヘキシジングルコン酸塩[CHG]シャワー、正常血糖)、術中期(抗菌薬予防投与、正常体温、CHG による皮膚処置、抗菌薬の再投与、ガウン/手袋の交換)および術後期(正常体温、正常血糖、創部被覆材の除去、酸素の最適化、切開洗浄)に実施されていた。これらの介入にもかかわらず、SSI 発生率は依然として高いことから、介入バンドルを最適化し、各手術期にわたって遵守度を向上させるためには、さらなる研究が必要であることが示されている。
結論
大腸手術に合わせた SSI 予防バンドルの実施により、SSI 発生率が低下し、コストが削減されることが示されている。周術期に沿って介入をグループ分けすることで、遵守度が向上する可能性がある。
監訳者コメント:
この論文は、結腸直腸手術における手術部位感染(SSI)予防バンドルの有効性と問題点について検討したものである。予防バンドルには平均して 11個 もの介入が含まれており、この複雑な構成が医療現場での遵守を困難にしている。その結果、期待されたほどの感染率の低下が得られていないことが明らかとなった。これらの結果から、介入の数を増やすアプローチは必ずしも効果的ではない。むしろ、医療現場での実現可能性を十分に考慮したうえで、確実に実施できる介入要素を選定し、それらを実践しやすいシンプルな形で導入することが求められているのかもしれない。
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