多剤耐性微生物が原因で接触隔離中の患者に対するカウンセリング・セッションは、情報提供に基づく判断を改善し不満足を減少させる★

2024.12.17

Counselling sessions for patients in contact isolation due to multi-drug-resistant organisms improve informedness and reduce dissatisfaction

V. Gillitzer*, A. Rath, A. Caplunik-Pratsch, S.Däumling, W. Schneider-Brachert, S. Gaube
*University Hospital Regensburg, Germany

Journal of Hospital Infection (2024) 154, 53-59

背景

多剤耐性微生物(MDRO)の拡散は、極めて重要な健康上の問題である。伝播を防ぐために実施される隔離方策は、結果として感染患者に有害な心理的影響をもたらす可能性がある。このことは、患者の病院体験および精神的健康な状態を改善するため、ならびに不十分な治療が行われることを防ぐためには、より良いコミュニケーションと情報提供が必要であることを強調している。

目的

本研究では、接触隔離中の個人に合わせたカウンセリング・セッションにより、患者らにおいて、自らの MDRO 感染状態の意味に関する自身の状況についての理解を高められるか否か、また患者らの健康な状態を高められるか否かを検討した。

方法

ドイツの 3 次病院 1 施設において介入前後研究を実施し、MDRO のために隔離された患者 64 例に、個人に合わせたカウンセリングを行った。カウンセリングには、MDROに関する情報、病院における隔離方策の根拠、ならびに入院前後における適切な行動を含めた。患者にはカウンセリング・セッションの前後に質問票に回答してもらい、カウンセリングが患者らの情報提供に基づく判断、患者の(不)満足、および健康な状態の各指標に及ぼす影響を評価した。

結果

カウンセリング・セッションの前には、患者らの不満足は MDRO に関する不安および不十分な情報提供に基づく判断と関連した。カウンセリング後に患者らは、自身の MDRO に関する状況についての理解が有意に改善し、自らの入院状況に関する不満足が顕著に減少し、これは主に情報を得たことによると考えられた。

結論

本研究は、MDRO に関する情報の改善が、病院内における患者の満足をいかに改善するかを示した、ドイツで初の研究である。本研究の結果は、医療従事者において、MDRO に感染した患者との相互作用およびコミュニケーションを改善することが決定的に必要とされることを強調している。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

MDRO により接触感染予防策が実施された際には、患者自身の行動が大きく制限されるため、精神的にも肉体的には大きなストレスを抱えることとなるが、MDRO への情報不足がさらに拍車をかけ、不安が強くなり、満足度が低下する。なぜこのような感染対策が必要なのかの理由や十分な説明による情報提供などのカウンセリング・セッションの機会をつくることで患者の不満度の改善が得られた。この研究では十分な説明とコミュニケーションの重要性を改めて確認している。

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