集中治療室の人工呼吸器装着患者から得た呼吸器黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)分離株の 2 年間の縦断的比較ゲノム解析
Longitudinal two-year comparative genomic analysis of respiratory Staphylococcus aureus isolates from intensive care unit mechanically ventilated patients S. Meyer*, A.C. Hernandez-Padilla, A-L. Fedou, T. Daix, D. Chainier, M-C. Ploy, P. Vignon, B. François, O. Barraud *UMR INSERM 1092, Université de Limoges, France Journal of Hospital Infection (2024) 154, 37-44
背景
人工呼吸器関連肺炎(VAP)は集中治療室における主な医療関連感染症であり、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)が早期 VAP の第 1 の病原菌である。
目的
全ゲノムシークエンシング(WGS)を用いて、人工呼吸器装着患者の下気道検体から得た連続する黄色ブドウ球菌分離株を比較し、交差伝播の可能性を明らかにするとともに、黄色ブドウ球菌の WGS データと、黄色ブドウ球菌による早期 VAP 患者との関連の可能性を検討した。
方法
2 年間に呼吸器黄色ブドウ球菌分離株が記録された人工呼吸器装着患者全例を対象とした。WGS により、タイピング、比較ゲノムおよび系統発生解析、さらに抗菌薬耐性遺伝子および病原性遺伝子の解析が可能であった。呼吸器感染症事象が発現した患者と発現しなかった患者との間で、病原性遺伝子を比較した。
結果
患者 167 例から得た黄色ブドウ球菌分離株合計 172 株の配列を決定した。WGS により、黄色ブドウ球菌集団は多クローン性であり、医療交差伝播の可能性があるのは 2 つのみで、それぞれ分離株 2 株(2.3%)であることが明らかになった。耐性率はきわめて低く、強い遺伝子型/表現型関連が認められ、病原性プロファイルは配列型に強く依存した。VAP と病原性プロファイルの間に有意な相関は認められなかった。
結論
人工呼吸器装着患者の連続する呼吸器黄色ブドウ球菌分離株を調べた本研究では、交差伝播はきわめて低レベルであることが明らかになった。黄色ブドウ球菌の WGS データと VAP 発生率との間に関連は認められなかった。
監訳者コメント:
本論文は、ICU で人工呼吸器管理を受ける患者の呼吸器検体から得られた黄色ブドウ球菌株を対象に、全ゲノム解析(WGS)を行い、感染動態や病原性因子との関連性を評価した研究である。黄色ブドウ球菌感染は人工呼吸器関連肺炎(VAP)の主因であるが、本研究では水平伝播の頻度は低く(2.3%)、患者自身の鼻腔保菌株が主な感染源である可能性が示された。鼻腔から気管チューブを介して肺に菌が移動するプロセスが重要であると考えられる。また、感染発症と菌の遺伝子型や病原性プロファイルに相関はなく、宿主の免疫応答や肺組織の回復力が重要な役割を果たしていると考えられた。本研究は、交叉感染対策に加えて、患者がもともと保有する微生物による感染を防ぐ対策の重要性を強調し、ICU での感染対策を再考する契機となる示唆に富む研究である。
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