DNA を内包したシリカナノ粒子を用いた新生児病棟のアウトブレイクシミュレーション:重要な伝播範囲を明らかにする★

2024.12.17

Outbreak simulation on the neonatal ward using silica nanoparticles with encapsulated DNA: unmasking of key spread areas

M. Wallner*, L. Pfuderer, L. Bašková, K. Dollischel, R.N. Grass, A. Kücher, A.M. Luescher, J.M. Kern
*University Hospital Salzburg, Paracelsus Medical University Salzburg, Austria

Journal of Hospital Infection (2024) 154, 18-28

背景

院内感染は重大な脅威をもたらす。とくに新生児集中治療室(NICU)では、微生物に起因するアウトブレイクがたびたび発生するが、発生源やダイナミクスは最終的に特定されない。

目的

DNA を内包したシリカナノ粒子(silica nanoparticles with encapsulated DNA:SPED)を用いてアウトブレイク事象をシミュレートし、NICU における伝播パターンを可視化することにより、これらのダイナミクスに関する理解を深める。

方法

実際の条件および職員の活動における 3 つの異なる伝播ダイナミクスを再現するために、3種類の DNA を内包したシリカナノ粒子(SPED)を病棟に戦略的に設置した。病棟全体の事前に規定した 22 地点で 4 日間、消毒薬に耐性を示す DNA を内包したシリカナノ粒子(SPED)DNA の検体を採取し、定量的ポリメラーゼ連鎖反応解析を実施した。

結果

職員区域から、多数の患者病室を含む病棟全体への急速な DNA を内包したシリカナノ粒子(SPED)伝播が示された。一方、患者病室に最初に配置した場合は、職員区域で伝播が生じたのみで、患者区域における分散は認められなかった。

結論

本研究は、アウトブレイクダイナミクスのシミュレーションにおける DNA を内包したシリカナノ粒子(SPED)利用の道を開いている。職員区域が病棟全体の伝播の重要な誘発スポットである可能性を明らかにすることにより、本研究で認められたパターンは、アウトブレイク事象に関するより包括的な見方をもたらし、病院の院内感染率を低下させるための衛生策およびトレーニングの再考につながる可能性がある。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

本論文は、新生児集中治療室(NICU)における病原体の拡散経路を可視化するために DNAを内包したシリカナノ粒子(SPED)を使用したシミュレーション研究である。スタッフエリアが病原体拡散の主要なトリガーである一方、患者エリアからの拡散が限定的である点が示されており、従来の感染対策の視点に重要な課題を提起している。特に、手指衛生やスタッフエリアの管理が感染制御の要であることを指摘し、視覚的リマインダー(例:手洗いポスター)や清掃チェックリストの導入など、日本の医療現場でも即応可能な具体的対策が提案されている。WHO の手指衛生フレームワークでは、スタッフエリア(医療環境)内の手指衛生や環境整備に十分な焦点が当てられておらず、本研究は医療関連感染対策の新たな方向性を示すものと言える。

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