全ゲノムシークエンシングにより、消化器内視鏡の微生物学的サーベイランスで検出されたバイオフィルム関連緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の持続が確認される★
Whole-genome sequencing establishes persistence of biofilm-associated Pseudomonas aeruginosa detected from microbiological surveillance of gastrointestinal endoscopes G.S.E. Tan*, G.J.M. Chia, N.M. Thevasagayac, S.Q.D. Loy, S.R.S. Prakki, Z.Q. Lim, J.Y. Chua, J.W.Z. Chia, K. Marimuthu, S. Vasoo, O.T. Ng, B.F. Poh, B.S.P. Ang *Tan Tock Seng Hospital, Singapore Journal of Hospital Infection (2024) 152, 73-80
背景
消化器内視鏡から得た微生物学的サーベイランス(MS)培養における緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)の検出率が上昇していることが、Tan Tock Seng Hospital Singapore において 2020 年 3 月から 2023 年 3 月の間に観察された。
目的
本調査における全ゲノムシークエンシング(WGS)の使用について記述すること。
方法
すべての緑膿菌株について WGS を用い、分離株との一対比較(pairwise comparison)を実施して、遺伝的関係の評価を目指した。再処理実践および環境サンプル採取の包括的レビューを実施した。
結果
緑膿菌分離株 22 株が内視鏡の MS 培養により検出された。15 株(68%)は、 WGS により得られた。分離株について 18 件の一対比較を行い、このうち 10 件に遺伝的関係があることが分かった。内視鏡 1 本では、その後の MS により緑膿菌が繰り返し培養され、いずれも遺伝的関係があり、内視鏡再処理を繰り返しているにもかかわらず持続していることから、ルーチンの再処理では根絶できないバイオフィルムの持続が確認された。他のいずれの内視鏡から培養で得られたすべての緑膿菌株には、遺伝的関係がなかった。再処理実施状況の検討から、臨床使用時に内視鏡に接続された空気/水バルブの存在が明らかになった。これらのバルブを調べたところ、亀裂と破断が証明された。その他の環境サンプルはすべて陰性であった。
結論
WGS の結果は、一般的な汚染源の可能性が低いことを明らかにする助けとなり、内視鏡内でバイオフィルムが形成され、その結果、MS 培養により遺伝的関係を認める陽性結果が繰り返し出るという仮説を支持するものである。このことはおそらく、損傷を受けた空気/水バルブの不完全な再処理と関係しており、このためバイオフィルムが形成されたと考えられる。損傷したバルブをすべて交換した後、個別に超音波洗浄により洗浄した上で滅菌を行ったところ、緑膿菌は検出されなくなった。
監訳者コメント :
検出菌株の相同性の判断に次世代シーケンサーを用いた全ゲノム解析が近年急速に導入されており、感染経路の疫学調査における分子疫学的手法として利用されている。世界的に標準的な解析手段となってきているが、次世代シーケンサーの導入費用とともに試薬代が高価であることが実施上の最大の壁となっている。
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