多剤耐性グラム陰性菌が検出された患者の接触予防策と隔離策の中止を目的とした積極的追跡調査★

2024.10.31

Active follow-up of patients identified with multidrug-resistant Gram-negative bacteria to discontinue contact precautions and isolation measures

C.P. Haanappel*, A.F. Voor in ‘t holt, I. de Goeij, W. de Groot, J.A. Severin, M.C. Vos, L.G.M. Bode
*Erasmus MC University Medical Center, The Netherlands

Journal of Hospital Infection (2024) 152, 105-113

背景

多剤耐性グラム陰性菌(MDR-GNB)感染が検出された患者に対して指示された不必要な隔離策を差し控えることは極めて重要である。

目的

MDR-GNB(カルバペネマーゼ産生のない)感染が検出された患者の不必要な隔離策を中止することを目的とした積極的な追跡戦略が、受動的な追跡と比べて、入院中の隔離日数の減少につながるかどうかを評価すること。

方法

MDR-GNB が初めて検出されてから 2 年間にわたって、積極的な追跡戦略と受動的な追跡戦略を比較した。患者は、スクリーニング培養が 2 回続いて陰性となった後に、陰性と判定することができた。積極的追跡の患者は、MDR-GNB の検出から 6 か月間スクリーニング培養のための質問票を受け取った。組み入れられた2,208 例の患者のうち、1,424 例の患者(64.5%)が受動的に追跡され、784 例の患者(35.5%)が積極的に追跡された。

結果

スクリーニング培養が十分行われた(少なくとも 2 回)積極的追跡の患者の方が、受動的追跡の患者と比べて、MDR-GNB 陰性と判定された患者の割合が有意に高かった。成人患者で 66.9%対 20.6%(P < 0.001)、小児患者で 76.0%対 17.1%(P < 0.001)であった。積極的追跡でスクリーニング培養が十分であった患者と、スクリーニング培養は不十分であった患者の比較では、小児患者において、隔離日数の減少が明らかになった(中央値 10.6 対 1.6 日、P = 0.031)。この差は、成人では統計的に有意ではなかったが(隔離日数の中央値 5.3 対 4.2)、積極的に追跡されていて、培養が十分(≧ 2)であった患者は、成人でも小児でも、隔離日数の減少は価値のあるものであり、臨床的に重要であることを示していた。

結論

我々は、MDR-GNB が検出された患者に対して、不必要な感染予防策を更に行うことを防ぐために、積極的な追跡戦略を推奨する。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

薬剤耐性菌保菌患者の接触予防策、隔離予防策中止についての明確な基準はなく、各医療機関で基準を設けて行われていることが多い。日本では個室が少ないこともあり、不必要な隔離を減らすことは意義深い。本研究では多剤耐性グラム陰性菌が対象であり、ESBL 産生腸内細菌やカルバペネマーゼ産生のないカルバペネム耐性腸内細菌、カルバペネマーゼ産生のない多剤耐性緑膿菌などを含む。多剤耐性菌高蔓延国では必要に迫られて隔離予防策の中止の影響が調査されることが多いが、今回は厳格な隔離予防策が推奨される多剤耐性菌低蔓延国であるオランダからの報告であることは興味深い。

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