血液腫瘍内科患者における中心ライン関連血流感染症のリスクに対する間欠注入と連続注入の影響の比較:準実験研究★★

2024.09.03

Impact of intermittent versus continuous infusions on central line-associated bloodstream infection risk in haemato-oncology patients: a quasi-experimental study

A. MacPhail*, A. Nguyen, V. Camus, M.-N. ChraÏti, E. Dalex, Y. Chalandon, G. Catho, D. Bosetti, S. Masouridi-Levrat, S. Harbarth, M.-C. Zanella, N. Buetti
*Geneva University Hospitals, Switzerland

Journal of Hospital Infection (2024) 151, 21-28


背景

輸液間にピギーバックシステムによる連続注入を実施することで、中心静脈カテーテル(CVC)の切断および再接続が回避され、これにより、ライン汚染の機会が低減する。しかし、連続注入と間欠注入が中心ライン関連血流感染症(CLABSI)に及ぼす影響は不明である。

目的

一次的な注入の中断とラインの切断が血液腫瘍内科病棟の患者における CLABSI 発生率に及ぼす影響を、70%イソプロピルアルコールキャップ使用の有無により検討すること。

方法

血液腫瘍内科病棟 2 施設において準実験研究を実施した。ベースライン(P1、2020 年 9 月から 2021 年 8 月まで)には、ピギーバック法による連続静注を必ず行うこととした。第一介入期間(P2、2021 年 9 月から 2022 年 8 月まで)には、注入の切断が、受動的除染のために70%イソプロピルアルコールキャップを用いて実施された。第二介入期間(P3、2022 年 9 月から 2023 年 8 月まで)には、注入の切断をイソプロピルアルコールキャップを使用せずに継続した。CLABSI 発生率を、3 つの介入期間について segmented Poisson回帰を用いて比較した。

結果

CVC のべ 764 本における計 11,039 カテーテル日、および 16,226 患者日が対象となった。全介入期間にわたり、CLABSI 21 件が記録された。P1 と比較して、CLABSI の発生率比(IRR)には、P2(IRR 0.76、95%CI 0.27 ~ 2.15)および P3(IRR 0.79、95%CI 0.28 ~ 2.22)には有意差はなかった。本研究期間中に、カテーテル閉塞により抜去された CVC はなかった。CLABSI 21 件中 5 件が複数の微生物によるものであり、21 例中 19 例(90%)でコアグラーゼ陰性ブドウ球菌が分離された。

結論

CVC を留置した血液腫瘍内科患者において、連続注入の中断により CLABSI 発生率には、イソプロピルアルコールキャップ使用の有無にかかわらず、実質的な変化はなかった。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

血液腫瘍患者では、治療経過中に出血傾向が出現したり、抗がん剤、血液製剤や抗生剤等の投与が頻繁にあるため血管確保は必須である。しかしながら、挿入期間が長期にわたるため、中心静脈へ挿入された場合には輸液ラインの側管あるいは接続ポートからの細菌汚染による CLABSI を発生させないことが重要である。持続的な注入は輸液と輸液ラインにより日常的な活動 ADL が制限され患者には不快であるとともに転倒などの事故による抜去などのリスクと、ケアする医療者患者にも輸液管理の煩雑さが発生する。一方、間欠的接続にすることでこれらのデメリットを解消できるが頻回の接続と切断が必要となり、その度毎の汚染リスクを回避するために、接続部位の消毒等による厳重な無菌的処置が必要となる。本論文ではさらに毎回の接続部位の消毒(2%クロルヘキシジン含有ワイプ)とアルコール含有キャップ装着との比較をしているが CLABSI 発生率に有意差はなかったが、少数の施設での検討であり、他施設でのさらなる検証が必要である。

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