3 次病院にはびこるラシウス・ネグレクトゥス(Lasius neglectus)というアリによる病原菌の物理的な拡散のリスク評価★

2024.08.18

Risk assessment of the mechanical spread of bacterial pathogens due to Lasius neglectus ants infesting a tertiary hospital

H. Frickmann*, S. Hurtig, A.R. Greine, S. Hering, O. Benedek, P. Warnke, A. Podbielski
*University Medicine Rostock, Germany

Journal of Hospital Infection (2024) 150, 83-90


序論

病原性微生物の物理的な拡散は、ゴキブリで調べられてきたが、アリではゴキブリほどよく調べられていない。アリについて入手できる情報はゴキブリよりかなり少ない。3次医療病院でラシウス・ネグレクトゥス(Lasius neglectus)というアリがはびこったことがきっかけで、病原体をアリが媒介するという物理的な伝播についての調査を行なった。

方法

整形外科部門、耳鼻咽喉科診療所、眼科診療所、および屋外にはびこる L. neglectus をモニターし、季節や天候の影響と相関させた。アリの外骨格への微生物の定着と、昆虫全体のホモジネートでの微生物の定着、また、外骨格へ人工的に定着させた黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の除菌の動態について評価した。

結果

低レベルにはびこっている状況では、L. neglectus の活動性は、季節的変動を示し、気温と正に相関していた(r = 0.7515、P = 0.0368)が、降水量とは相関していなかった(r = 0.4699、P = 0.2431)。環境中の片利共生生物の定着が優位を占めていたが、院内感染の原因として重要な可能性がある細菌の外骨格への定着は、入院患者の環境からのアリ(6%)の方が、屋外からのアリ(0%)より多かった。外骨格へ人工的に定着させた黄色ブドウ球菌は、72 時間以内に、ベースラインと統計的に区別できない値まで減少した。

結論

病因として重要な細菌の定着率が低いこと、および汚染があった場合に急速に自然に除菌されることから、アリが患者への伝播を媒介する可能性は低い。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

蚊、ダニ、ノミ、ハエなどの節足動物による媒介される感染症は、マラリア、細菌、ウイルス等多岐にわたるが、これらの病原体は節足動物の体表面への付着・定着と消化管内へ定着の 2 種類が報告されている。また、ゴキブリによる病原体、特にサルモネラ菌や耐性菌による伝播が検討され、院内感染媒介の潜在的可能性が報告され、サルモネラ菌についてはゴキブリによる感染伝播が関係したと報告があり、耐性菌については明確な証拠はない。一方、アリが病原体の運搬に一役買っているかどうかについてはほとんど知られておらず、今回の検討ではこの種類のアリがベクターとして感染症を媒介する可能性はきわめて低いことが確認された。

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