ポルトガルの病院内でのカルバペネム耐性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の拡大についてのゲノムレベルの理解★

2024.06.30

Genomic insights into the expansion of carbapenem-resistant Klebsiella pneumoniae within Portuguese hospitals

N.A. Faria*, T. Touret, A.S. Simões, C. Palos, S. Bispo, J.M. Cristino, M. Ramirez, J. Carriҫo, M. Pinto, C. Toscano, E. Gonҫalves, M.L. Gonҫalves, A. Costa, M. Araújo, A. Duarte, H. de Lencastre, M. Serrano, R. Sá-Leão, M. Miragaia
*Universidade Nova de Lisboa, Portugal

Journal of Hospital Infection (2024) 148, 62-76






カルバペネム耐性肺炎桿菌(CR-KP)は公衆衛生上の懸念事項であり、死亡率の高い感染を引き起こし、治療の選択肢は限られ、感染制御の戦略を難しくする。ポルトガルでは、CR-KP の割合が急増したが、この増加と関連する因子は十分に探索されていない。この問題に取り組むために、ポルトガルの Lisbon region の 5 つの病院で 2017 年から 2019 年に採取された CR-KP の分離株 200 株のドラフトゲノム配列を、系統解析とレジストーム解析を使って比較した。

CR-KP の大部分は、シークエンス型(ST)13(29%)、ST17(15%)、ST348(13%)、ST231(12%)、ST147(7%)に属していた。カルバペネム耐性は、大部分で、KPC-3(74%)またはOXA-181(18%)の存在によってもたらされていた。これらは、それぞれ、IncF/IncN プラスミドおよび IncX プラスミドと関連していた。ほぼすべての分離株が多剤耐性で、アミノグリコシド系、β-ラクタム系、トリメトプリム、ホスホマイシン、キノロン系、スルホンアミド系に対する耐性決定因子を持っていた。それに加えて、分離株の 11%は、コリスチンにも耐性であった。定着する分離株と感染を起こす分離株は関連性が高く、定着していた患者の大部分(89%)は、過去の入院を報告した。さらに、コアゲノム複数部位塩基配列タイピングデータの解析で特定した 171 件の cross-dissemination (アレルの違いが 5 個未満)のうち、41 件は違う病院の間で発生し、130 件は同じ病院内で発生していた。 これらの結果は、Lisbon region における CR-KP の播種は、可動遺伝因子内のカルバペネマーゼの獲得、外来患者に定着している CR-KP の病院内への流入、病院内や病院間での CR-KP の伝播の結果であることを示唆している。ポルトガルにおいて、CR-KP 感染の負荷を減少させるには、カルバペネムの慎重な使用、患者が病院に入ったときのスクリーニング、感染制御の改善が必要である。

サマリー原文(英語)はこちら

監訳者コメント

カルバペネム耐性肺炎桿菌(CR-KP)は死亡率の高い感染症を引き起こし、ヨーロッパの一部の国では蔓延している。日本ではいまだ流行が見られないが、訪日外国人が増えている現状においては日本に持ち込まれるリスクが増しており、警戒すべき薬剤耐性菌である。日本においてもカルバペネム系薬の慎重な投与をはじめとして総合的な感染制御を推進する必要がある。

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